ビタミンB1
ビタミンB1とは
ビタミンB1は水溶性ビタミンの一種で、エネルギーの代謝において重要な役割を果たします。
特に、糖質をエネルギーに変えるために必要不可欠で、脳や神経系の正常な機能を保つためにも欠かせない栄養素です。
ビタミンB1の不足は、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があり、特に脚気や神経障害などがその一例です。
日常の食事から効率よく摂取することが求められています。
日本人によって発見されたビタミンB1
ビタミンB1は、東京帝国大学農学部の教授であった鈴木梅太郎博士によって1910年に発見されました。
鈴木博士は、脚気(ベリベリ)の予防や治療に玄米食が有効であることに着目し、米ぬかから脚気に効く有効成分を分離しました。
この成分は、イネの学名である「Oryza Sativa」にちなんで「オリザニン」と名付けられ、1911年に東京化学会の例会で発表されました。
しかし、翌年にポーランドの化学者フンクが同じ栄養素を発見し、「ビタミン」と名づけて発表したことで、フンクのほうが有名になってしまいました。
江戸わずらい=脚気はビタミンB1不足?
江戸時代、それまで主に玄米を食べていた江戸の人々にも白米食が広がりました。以前は、白米は身分の高い人しか食べられないものだったのです。
ところが、その頃から奇妙な病が流行り始めました。
白米を食べる習慣は都市部から広がり、地方ではまだまだ玄米食が中心だった当時、江戸を訪れた地方の大名や武士に、足元がおぼつかなくなったり、寝込んでしまったりと、体調が悪くなることが多くなりました。
そんな人たちも故郷に帰るとケロリと治ってしまうことが多かったため、この病は「江戸わずらい」と呼ばれました。
今では「脚気」という呼び方のほうが一般的です。
当時の明確なデータはありませんが、亡くなる人も少なくなかったと言われています。
のちに、これはビタミンB1不足が原因であることが明らかになりました。
胚芽部分に多いビタミンB1は、精米で取り除かれてしまうため、白米にするとわずかしか残りません。
当時の人々は一汁一菜が基本で、ご飯を大量にとり、おかずの量も数も少なかったこともビタミンB1不足の原因となっていました。
現代人も糖質の過剰摂取には要注意
現代においても糖質の過剰摂取や偏った食生活、ビタミンB1を消耗しやすい人は、潜在的にビタミンB1が欠乏する「脚気予備軍」とされています。
ビタミンB1が不足すると糖質がうまくエネルギーに変換されません。
脚気予備軍では、食欲がない・疲れやすい・だるいなどの症状が現れます。
さらに、長期間のビタミンB1不足は心臓や脳にも悪影響を与えるため、注意が必要です。
日常的な食事から適切に摂取することが求められます。
ビタミンB1の消耗
ビタミンB1は次のような理由で消耗されます。
- 甘いものやアルコールの摂り過ぎ
- 妊娠や授乳
- ストレス
- 過食
- 加齢
特に夏場は食欲が低下し、麺類や清涼飲料水など糖質の摂取が多くなるため、ビタミンB1の消耗が激しくなります。
また、運動時や頭や神経を酷使する時など、体はビタミンB1を多く消費するため、不足しがちです。
調理による消耗にもご注意を
ビタミンB1は水溶性で高温に弱いため、調理によって失われやすい栄養素です。
ゆでたり煮たりすると食材からゆで汁や煮汁に移ってしまうため、汁も飲むようにしましょう。
いっぽうで、生の貝類や甲殻類、淡水魚にはビタミンB1を分解してしまう酵素(チアミナーゼ)が含まれているため、十分に加熱して摂取する必要があります。
ビタミンB1が不足するとどうなる?
ビタミンB1が不足すると、エネルギー代謝が滞り、疲労感や無気力感が増加することがあります。
特に、脚気は神経系に影響を及ぼし、手足のしびれや筋肉の萎縮を引き起こす可能性があるのです。
さらに、長期間のビタミンB1不足は心臓や脳にも悪影響を与えるため、注意が必要です。
日常的な食事から適切にビタミンB1を摂取することが求められます。
ビタミンB1を含む食品
ビタミンB1を効率的に摂取するためには、日常の食事に工夫を凝らすことが重要です。
ビタミンB1は特に豚肉や全粒穀物、豆類に豊富に含まれており、これらの食品をバランスよく取り入れることで、必要な量を摂取できます。
食事から自然に摂取できるため、サプリメントに頼ることなく、健康を維持するための栄養源として活用できます。
ビタミンB1が豊富な食材
ビタミンB1を効率よく摂取するためには、特定の食材を意識的に選ぶことが有効です。
以下の食材はビタミンB1を豊富に含んでいます。
- 豚肉
- レンズ豆
- そば
- 玄米
- ナッツ類
- ブロッコリー
これらの食材を日常的に取り入れることで、健康を支える栄養素を確保することができます。
おすすめのビタミンB1食品
豚肉をはじめ、レンズ豆やそば、玄米などがビタミンB1を豊富に含む食品です。
特に、豚肉はビタミンB1の含有量が高く、効率的に摂取できます。
また、レンズ豆やそばも優れた選択肢で、食事にバリエーションを加えながらビタミンB1を摂取することができます。
これらの食品を使ったレシピを活用し、健康的な食生活を送ることが大切です。
調理法でビタミンB1を守る
ビタミンB1は水溶性のため、調理時に失われやすい栄養素です。
特に、茹でたり蒸したりする調理法が推奨されます。
例えば、豚肉を焼くよりも煮込む方が、ビタミンB1をより多く保持することができます。
また、調理時間を短縮し、食材を余分に煮込まないことがポイントです。
これにより、栄養素を効率的に摂取することが可能です。
ビタミンB1のサプリメント
ビタミンB1は食品から摂取するのが理想ですが、場合によってはサプリメントの利用も考慮する必要があります。
特に、食事から十分な量を摂取できない方や特別な健康状態の方にとって、サプリメントは手軽な栄養補給の手段となるのです。
適切な選択を行うことで、健康を維持するための一助となります。
サプリメントの選び方
ビタミンB1は単独ではなくビタミンB群(複合体・コンプレックス)でのサプリメントが望ましいです。
実際に市販のビタミンBサプリメントはほとんどが複合体になっています。
それはビタミンB群は単独よりも複合体で摂ったほうがB群全体が相乗的に効果を発揮するためです。
サプリメントの摂取タイミング
ビタミンB群は体内で貯蔵できません。
その点は鉄とは対照的です(鉄はフェリチンというタンパク質と一緒になって体内に貯蔵されます)。
したがって、いかに長く体内(血中)に留めることができるかが重要です。
血中に留まる時間が長ければ長いほどビタミンB群を必要とする臓器に届けられることになります。
単にビタミンB群を詰め合わせたサプリメントではなくビタミンB群の血中濃度推移や滞留時間などがオープンに情報提供されたサプリメントの利用をおすすめします。
ビタミンB1に関するQ&A
ビタミンB1について、以下に、よくある質問をまとめました。
ビタミンB1の過剰摂取は?
過剰摂取による重大な副作用は稀です。
万が一、体調に異変を感じた場合は、すぐに摂取を見直すことが大切です。
ビタミンB1の必要量は?
成人のビタミンB1の推奨摂取量は、男性が約1.2mg、女性が約1.1mgとされています。
これはあくまで欠乏症を防止するレベルと考え、年齢や生活習慣によって必然的に多くなると考えていいでしょう。
自分に合った量を意識することが重要です。
妊婦や授乳中の摂取について
妊婦や授乳中の方は、通常より多くのビタミンB1が必要です。
必要であれば医師と相談しながら適切な摂取を心がけ、健康な妊娠を支えるためにも、元気な赤ちゃんのためにもしっかりビタミンB1を確保することが大切です。
医師、医学博士、栄養療法ドクター
2002年 金沢医科大学卒業 同年、医師免許取得
2008年 博士号取得 同年、金沢医科大学助教
その後整形外科専門医、整形外科リウマチ専門医取得
2009年 公立宇出津総合病院整形外科医長、
リハビリテーション科医長
2013年 神奈川県内の病院に勤務
2017年 回復期リハビリテーション専従医取得
2022年3月 病院勤務を辞め独立
2022号9月 株式会社ニュートライズ起業