熱中症の時に必要な栄養とは|熱中症に効く食べ物を紹介
蒸し暑い季節になると熱中症で搬送される患者が急増します。
特に近年は35℃を超える猛暑日が珍しくなくなり、以前に比べて熱中症のリスクははるかに高まっているといえるでしょう。
熱中症対策にはこまめな水分補給はもちろんのこと、栄養補給にも心がけなくてはなりません。
本記事では熱中症対策に必要な栄養素や食べ物などについて詳しくご紹介します。
熱中症の栄養学的側面
はじめに、熱中症とはどのような状態を指すのか栄養学的な観点から説明します。
脱水
熱中症の主な原因の一つとして脱水が挙げられます。
ヒトの体はおよそ60%が水分で構成されていますが、適切な水分量が維持されなくなると体の機能が正常に働かなくなり、筋肉のけいれんや倦怠感、さらに重症化すると意識障害などを引き起こすこともあります。
夏場に熱中症のリスクが高まるのは、発汗量も多くなり脱水状態に陥りやすくなるためです。
電解質の不均衡
大量の汗をかくと体内の電解質バランスが崩れやすくなり、これが原因で熱中症に陥ることもあります。
ヒトの体内にはナトリウムやカリウムといった電解質が含まれており、体内の浸透圧の調整や筋肉の収縮などに重要な役割を果たしています。
こまめに水を飲んでいたとしても、ナトリウムやカリウムといった栄養素を補給できていないと電解質のバランスが崩れ、熱中症に陥る危険性があります。
エネルギー消費の増加
高温環境下での活動は発汗や血流の増加に伴い、多くのエネルギーを消費します。
十分な栄養を補給しないまま活動を行うとエネルギー不足に陥り、熱中症のリスクが高まります。
特に夏場は食欲が低下しがちで朝食を摂らない方も多いですが、熱中症予防のためにもバランスの良い食事を心がけることが大切です。
熱中症で失われる栄養素と症状の関係性
発汗量が多くなると水分と一緒にさまざまな栄養素も排出されますが、それによってどのような症状が現れるのでしょうか。
水分
水分が不足すると体の温度調節機能が正常に働かなくなり脱水症状が現れます。
初期段階の症状としては、喉の乾き、軽い倦怠感や頭痛、めまいなどが現れますが、重症化すると意識を失うこともあります。
高温多湿の環境下では脱水状態に陥りやすくなるため、喉が乾いたと感じる前にこまめな水分補給を心がける必要があります。
ナトリウム
ナトリウムは電解質の一種であり、体内の浸透圧を調整する重要な役割を担っています。
ヒトの汗にはナトリウムが含まれており、発汗量が増えるとナトリウムも失われ電解質のバランスも崩れます。
その結果、筋肉のけいれんや疲労感、頭痛などの症状が現れることがあります。
熱中症対策として水分と合わせて塩分摂取も推奨されているのは、ナトリウム不足を補う目的があるためです。
カリウム
カリウムも電解質の一種であり、浸透圧の調整および筋肉への神経伝達や心臓機能の調節といった役割を担っています。
ナトリウムと同様に発汗によって失われやすい栄養素であり、カリウムが不足すると手足に力が入らなくなったり、筋肉のけいれんや心拍不整などの症状が出やすくなります。
マグネシウム
マグネシウムも電解質の一種であり、筋肉の収縮や神経伝達に重要な役割を果たしています。
マグネシウムが不足すると、カリウムと同様に筋肉のけいれんや心拍不整といった熱中症の症状が現れることがあります。
カルシウム
カルシウムといえば骨の健康維持に欠かせない栄養素というイメージがありますが、実はそれ以外にも筋肉の収縮や神経伝達にも重要な役割を果たしています。
電解質の一種であるカルシウムが不足すると、筋肉のけいれんや痺れなどの症状が出やすくなります。
上記以外で熱中症の時に摂取すべき栄養素とは
熱中症の予防には水分や電解質以外にもさまざまな栄養素を摂取する必要があります。代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
ビタミンB群
ビタミンB1やB2といったビタミンB群は、炭水化物、脂質、タンパク質の代謝をサポートし疲労回復を助ける重要な役割を果たします。
また、ビタミンB6やB12は神経伝達をサポートする働きもあり、熱中症の症状として現れる筋肉のけいれんや痺れなどを和らげたり予防する効果が期待できます。
ビタミンC
暑い日が続くと体力が消耗しやすく、夏バテによって熱中症にかかりやすくなります。
ビタミンCには疲労回復の効果や免疫力向上の効果が期待できるため、特に夏場は積極的に摂取したい栄養素のひとつです。
ビタミンE
ビタミンCは発汗や排泄とともに体外に排出されるため、こまめな補給と吸収効率のアップが重要です。
ビタミンEにはビタミンCの吸収を助ける働きがあり、同時に摂取することで優れた疲労回復効果が期待できます。
鉄分
鉄分は体内に酸素を運ぶ役割を果たす栄養素ですが、汗とともに体外に排出されやすい特性もあります。
熱中症にかかると鉄分不足によって貧血の症状が現れることもあるため、これを防ぐためには水分と塩分、そして鉄分も積極的に吸収することが大切です。
クエン酸
熱中症予防のためには効率的に水分および電解質を吸収することが求められます。
クエン酸は水分とナトリウムの吸収を助ける働きがあるほか、疲労回復の効果も期待できる栄養素です。
熱中症の時に摂るべきではないものは?
上記とは反対に、熱中症の際に摂ってはいけない食品や飲料にはどのようなものがあるのでしょうか。
特に注意すべきなのが、利尿作用のある飲料です。ビールやハイボールなどのアルコール飲料や、カフェインを多く含むコーヒーやエナジードリンク、お茶なども排泄を促進するため脱水状態に陥りやすくなります。
また、アイスクリームなど糖分の摂りすぎも喉が乾きやすくなるため、熱中症対策という観点では避けたほうが良いでしょう。
熱中症に効く食べ物を紹介
熱中症予防のために積極的に摂取したい食品をご紹介します。
スイカ
スイカは約90%が水分であり、脱水状態を防ぐために最適な食品です。
また、ビタミンCが豊富で免疫力向上や抗酸化作用が期待できるほか、カリウムも多く含まれているため体内の電解質バランスを適正に保つ働きもあります。
夏の定番であるスイカは、熱中症予防の意味でも理にかなった食品といえるのです。
梅干し
梅干しにはナトリウムが豊富に含まれており、発汗によって失われた塩分を補うのに役立ちます。
また、梅干しに含まれるクエン酸はエネルギー代謝を促進し疲労回復を助ける働きもあります。
お弁当やおにぎりの具として、熱中症のリスクが高まる夏場には積極的に摂取したい食品のひとつです。
トマト
夏野菜の定番であるトマトは水分が豊富で、ビタミンCとビタミンEも多く含まれています。
疲労回復や抗酸化作用により細胞を保護し、熱中症によるダメージを軽減する働きが期待できます。
また、カリウムも多く含まれているため適度な電解質バランスを維持し、筋肉のけいれんや痺れを防ぐ効果もあります。
きゅうり
トマトと並ぶ夏野菜の代表格、きゅうりも水分が多くビタミンCも豊富に含んでいるため熱中症対策に効果的な野菜です。
また、きゅうりに含まれるナトリウムやカリウムは体の熱を逃がす効果も期待できるため、暑い季節に最適な食品ともいえるのです。
豆腐
豆腐はタンパク質が豊富に含まれているため、熱中症によって消耗しやすいエネルギーを補うのに適しています。
鉄分やビタミンB群の含有量も多いため、体内のすみずみまで酸素を運び貧血を予防したり、エネルギー代謝を促進し疲労回復を助ける働きも期待できます。
バナナ
バナナにはカリウムとビタミンB6が豊富に含まれています。
体内の電解質バランスを適正に維持し筋肉のけいれんを防ぐほか、効率的なエネルギー代謝を促進し疲労回復にも寄与します。
さらに、バナナの糖分はエネルギーとして変換されやすいため、体力が低下した炎天下でも効率的な栄養補給ができます。
熱中症対策におすすめの飲み物は?
効率的に水分を補給できる飲み物は熱中症を防ぐために有効です。どういった飲み物がおすすめなのか、代表的なものをご紹介しましょう。
経口補水液
経口補水液とは、熱中症や脱水症状から回復させるための飲料です。
電解質のバランスを迅速に回復させるために開発されており、ナトリウムとカリウムの適切な割合によって汗で失われた電解質を速やかに補うことができます。
また、経口補水液にはブドウ糖も含まれているため速やかなエネルギー補給にも役立ちます。
と、ここまでが従来の一般的な解説ですが、近年、経口補水液に含まれる糖質量のあまりの多さが指摘されています。
特に果糖ブドウ糖液糖などの異性化糖はブドウ糖の10倍以上の糖化リスクがあります。
これにより血糖値を急激に上げてしまい血糖調節障害のリスクを一気に高める可能性があることを十分ご認識ください。
スポーツドリンク
熱中症予防のために有効なのがスポーツドリンクです。
運動や高温環境での活動中に失われる水分と電解質を補給するために開発されており、ナトリウムやカリウムによって最適な電解質バランスを維持します。
また、スポーツドリンクに含まれる糖分はエネルギー源としても提供されるため、疲労回復に効果を発揮します。
ここまでが従来の一般的な解説ですが、近年、スポーツドリンクに含まれる糖質量のあまりの多さが指摘されています。
特に果糖ブドウ糖液糖などの異性化糖はブドウ糖の10倍以上の糖化リスクがあります。
これにより血糖値を急激に上げてしまい血糖調節障害のリスクを一気に高める可能性があることを十分ご認識ください。
麦茶
夏の定番飲料である麦茶にはカフェインが含まれていないため、利尿作用が少なく水分補給に適しています。
また、麦茶にはビタミンB群やミネラルも豊富に含まれており、熱中症による疲労を軽減する効果も期待できるでしょう。
野菜ジュース
夏は食欲が低下するため、ビタミンCやビタミンB群などの栄養素を食事から摂取するのが難しいこともあります。
野菜ジュースであればこれらの不足しがちな栄養素を効率的に補うことができ、食欲が低下しがちな暑い季節でも飲みやすく水分補給にも役立ちます。
ただし、含まれる糖質量の多さにご注意ください。特に果糖ブドウ糖液糖などの異性化糖はブドウ糖の10倍以上の糖化リスクがあります。
これにより血糖値を急激に上げてしまい血糖調節障害のリスクを一気に高める可能性があることを十分ご認識ください。
塩水
経口補水液やスポーツドリンクなどがないときには、塩水で代用することもできます。
発汗によって失われた塩分を手軽に補うことができ、体内の水分バランスを保つのに役立ちます。
ただし、塩分過多にならないように適量を摂取することを心がけましょう。
まとめ
厳しい暑さが続く昨今、熱中症のリスクは高まっています。
熱中症予防にはこまめな水分補給が大切ですが、それと同時にミネラルやカリウム、ビタミンといった栄養素も適切に補給することも求められます。
また、暑い時期になると冷えたビールやハイボールなどのお酒が飲みたくなることもありますが、アルコールは利尿作用があるため飲み過ぎには注意が必要です。
熱中症が重症化すると意識障害を引き起こす可能性もあることから、今回ご紹介した内容を参考に十分な対策を講じておきましょう。