血栓を予防する重要性とは?日常で簡単に取り入れられる方法を紹介
パンデミックを経たいま、従来にも増して血栓への注目度が上がっています。
というのも、コロナウィルスとコロナワクチンが同様の機序で血栓を作り出すことが明らかになったからです。
血栓がもたらす深刻な病とわたしたち人類は、これまで長い間対峙してきました。
しかし技術が進歩した現代において、出来てしまった血栓に対抗する手段は「薬剤」に頼り切っているのが現実です。
お薬に頼ると言っても、血栓そのものを溶かすという経口のお薬は存在しません。
存在するのは注射薬であり、その使用はかなり制限されたものになります。
有名な「抗血小板薬」や「抗凝固薬」は必ずしも血栓を溶かすものではありません。
これらのお薬にはすべて、出血という深刻なリスクがあることには注意が必要です。
しかし、いっぽうで、ある食品において(それも日本人にかなり馴染みの深い食品が)安全に血栓だけを溶かす能力があることが40年近く前に医学的に証明されているのです。
薬の存在が大きすぎて、これまで光が当てられてこなかったその食品にあらためて注目しつつ、わたしたちが日常生活を営む中で、いかにすれば血栓のリスクを遠ざけることができるのか、考えていきたいと思います。
血栓とは
血栓とは、血管内にできる血のかたまりのことです。
通常血液は、血管の中をスムーズに流れ、全身を巡っています。
ところが、何らかの原因で血液が停滞したり、血液に異常が起こったりすることで血が固まりやすくなり、怪我をしたときにできるかさぶたのようなかたまり、いわゆる血栓ができます。
これが血管内を流れて肺や脳に「飛んで」(急に血栓が移動する様子を「飛ぶ」と表現します)血管を詰まらせると、命に関わる重篤な症状となることがあるのです。
血栓が引き起こす重大な事態
人体に備わる血液を固めたり溶かしたりする機能は絶妙なバランスの上に成り立っており、それはまるでシーソーのようだと例えられます。
ヒトの体内の血液は何も異常が無いときはスムースに全身を流れていますが、ひとたび出血が起こる(血管が壊れる)と、たちどころに止血が行われます。
普段はサラサラと流れている血液が、出血が起こった途端に、とても早いスピードで固まりだす営み、これを人体は日常的に無意識に行っています。
この活動を医学用語では凝固線溶系といいます。
なんらかの損傷で血管が傷ついた際に、止血(血液凝固)のために集まってきた血小板と赤血球を、フィブリン(繊維状タンパク質)があたかも細い針金のようにぐるぐる巻きにすることでそれらの塊が血栓となります。
止血が完了し血管が再生するとヒトが本来持っている凝固線溶系のバランスが作動し、できた血栓を溶かし去ります。
しかし、そのバランスが崩れている場合、できた血栓が溶解することなく、もしそれが心臓の血管に飛べば心筋梗塞、脳の血管に起これば脳梗塞となります。
血栓の先には血液が流れなくなり、細胞への酸素や栄養分の供給がストップしてしまいます。
その結果、細胞組織は壊死してしまいます。
日本人の死因は、第1位がガン、第2位が心筋梗塞、第3位が脳卒中であることはよく知られていますが、心筋梗塞と脳卒中はどちらも血栓ができることで発症する共通の病気です。
微小な血栓による健康への影響
「血栓が引き起こす重大な事態」では血栓症が引き起こす重大な事態を述べてきましたが、血栓がまだ微小な状態ではどうでしょうか。
以下に、微細な血栓が臓器に及ぼす影響を記載していきます。
<1>脳・心臓
認知機能の低下「ブレインフォグ」やうつ的症状、記憶力の低下なども血栓に関連している可能性が指摘されています。
<2>肺
激しい息切れは微小血栓の影響が考えられます。
<3>眼
網膜動脈の微細な血栓により、血流が悪くなり、結果、抗酸化力が低下し視野(明るさ)への影響が考えられます。
<4>皮膚
末梢の血流が滞ることで、血色が悪くなることが想像できます。
<5>腎臓
細かな血管の塊である糸球体に微小血栓が出来ると、排尿障害(夜間の頻尿)の発生が想像できます。
<6>膵臓
膵臓での微小血栓の存在は、インスリン分泌能との関連性が想像できます。
<7>胎盤
胎盤の血流は遅く、血管が細いため、血栓症が起こりやすいとされています。
不育症(習慣性流産)の中でも多い抗リン脂質抗体症候群は胎盤に血栓ができて血管梗塞がおこるものです。
<8>生殖器
微小血管の塊でもある生殖器での血栓の形成は生殖能力に影響を与えることが予想できます。
<9>がんとの関連
がん関連血栓症はがん患者さんにおける重要な合併症の一つです。
化学療法を行うがん患者さんの死因の第一位は「がんの進行(Progression of cancer)」が70.9%。
それについで2位は血栓症が9.2%(動脈血栓症5.6%、静脈血栓症3.5%)となっています。
血栓ができる原因
①血流の障害
血液はその流れが停滞すると固まりやすくなる性質を持っています。
血流が停滞しやすくなるのは長時間同じ姿勢を続けているときで、「エコノミークラス症候群」が有名です。
その他にも、血管が圧迫されるような状態(事故や災害などで長時間体の上に重いものが乗っていたり挟まれたりしている状態)が続くと、血栓ができやすくなります。
血液の異常
病気や感染症によって血液に異常が生じると血栓ができやすくなります。
具体的には高脂血症、糖尿病といった慢性疾患による影響や、感染症などによっても引き起こされます。
女性のホルモン剤のピルは卵胞ホルモンで作られていて、このホルモンは性質的にとても血栓を作りやすいものです。
③血管の硬化
血管の硬化は動脈の壁が硬くなって弾力がなくなり血流がスムーズでなくなることが原因で起こる病気で、動脈硬化と呼ばれています。
①でも書いた通り、血流が停滞すると血栓ができやすくなります。
動脈硬化は、喫煙、過度の飲酒、運動不足などの生活習慣で起こりやすく、糖尿病の合併症でも起こります。
④コロナ感染・ワクチン接種
パンデミックを経て明らかになったことは、コロナ感染・ワクチン接種のいずれにおいても結果として血栓ができやすくなる、ということです。
この2つに共通していることはスパイクタンパクの毒性です。
具体的にはコロナウイルスのスパイクタンパク、mRNAワクチンが生成するスパイクタンパクがともに血管壁を傷つけることが確認されており、それが血栓の原因となります。
mRNAワクチンの評価はここでは控えますが、これは確かに新しい技術であり、このワクチンの開発の基礎を築いたカタリン・カリコ博士とドリュー・ワイスマン博士は2023年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。
しかし、ワイスマン博士自身が「このワクチンは血栓を生じさせ、ヒトの血管を傷害する恐れがある」と2018年の論文(Nature)で警笛を鳴らしていることは意外と知られていません。
日常で簡単に取り入れられる血栓予防方法
運動
生活習慣病を改善するためにも運動を行うことは大切です。
ここでは一般論になりますが、お付き合いください。運動を行うことで血圧値・血糖値が下がり、善玉のHDLコレステロールが増えます。
骨粗しょう症の予防や、ストレス解消にもつながり、良質な睡眠をとることができます。
長距離を走ったり、スポーツジムで鍛えたリスるということではなくても、1日20分程度のウォーキングを毎日行うことでも十分に運動になるので、自宅から最寄りの駅まで歩く、エスカレーターではなく階段を使うなど、日常生活で無理なく行える運動を行っていきましょう。
納豆
生活習慣病を改善するためにバランスの取れた食事を、、、という表現は嫌と言うほど目にされてきたのではないでしょうか。
ここでは一般論よりも、具体論を書いていきます。
わたしたちが調べた限りにおいて、経口で摂取する食材で血栓の溶解が医学的に解明されているものは、納豆です。
納豆に含まれるナットウキナーゼというタンパク分解酵素が血栓(フィブリン)に直接作用してそれを溶解することが日本人医学博士の須見洋行先生(現倉敷芸術科学大学名誉教授)によって発見され、1986年に発表されました。
では、どの程度の量なら血栓を溶解するのかというと、残念ながら定量的なデータはありません。
市販の納豆にはナットウキナーゼが多いもので1パックに1500FU(FU=フィブリン溶解単位)含まれていると言われていますが、納豆のパッケージにFUの記載がないことからも、市販の納豆からは安定的にナットウキナーゼを産生することが難しいのだと推察できます。
定量的にナットウキナーゼを摂取するのであれば、サプリメントとして摂取することが最適かもしれません。
ただし、ナットウキナーゼは熱に弱いことや、ある程度の量を定期的に摂取する必要があります。
できれば、医療機関で血栓を示す血液検査データを読み取りつつ、量を調整しながら摂取することが望ましいですね。
あと、これは殆ど知られていないのですが、本格焼酎や泡盛の香気成分(酢酸ベータフェネチル)がt-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)とよばれる人間が血栓を溶かすために作り出す成分を増加させるというヒト試験データも、ナットウキナーゼを発見した須見洋行先生から発表されています。
沖縄の人たちが長生きされるヒントもこのあたりにあるのかもしれませんね。
禁煙
タバコには有害物質が多数含まれていることはご存知のとおりです。
さらにタバコに含まれるニコチンには血管を細くする作用があります。
血管が細くなると血流が悪くなり血栓が生じる原因となるので、血管の為に禁煙を行いましょう。
喫煙は血管にとって百害あって一利なし、ですね。
ビタミンB1
ビタミンB1とは
ビタミンB1は水溶性ビタミンの一種で、エネルギーの代謝において重要な役割を果たします。
特に、糖質をエネルギーに変えるために必要不可欠で、脳や神経系の正常な機能を保つためにも欠かせない栄養素です。
ビタミンB1の不足は、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があり、特に脚気や神経障害などがその一例です。
日常の食事から効率よく摂取することが求められています。
日本人によって発見されたビタミンB1
ビタミンB1は、東京帝国大学農学部の教授であった鈴木梅太郎博士によって1910年に発見されました。
鈴木博士は、脚気(ベリベリ)の予防や治療に玄米食が有効であることに着目し、米ぬかから脚気に効く有効成分を分離しました。
この成分は、イネの学名である「Oryza Sativa」にちなんで「オリザニン」と名付けられ、1911年に東京化学会の例会で発表されました。
しかし、翌年にポーランドの化学者フンクが同じ栄養素を発見し、「ビタミン」と名づけて発表したことで、フンクのほうが有名になってしまいました。
江戸わずらい=脚気はビタミンB1不足?
江戸時代、それまで主に玄米を食べていた江戸の人々にも白米食が広がりました。以前は、白米は身分の高い人しか食べられないものだったのです。
ところが、その頃から奇妙な病が流行り始めました。
白米を食べる習慣は都市部から広がり、地方ではまだまだ玄米食が中心だった当時、江戸を訪れた地方の大名や武士に、足元がおぼつかなくなったり、寝込んでしまったりと、体調が悪くなることが多くなりました。
そんな人たちも故郷に帰るとケロリと治ってしまうことが多かったため、この病は「江戸わずらい」と呼ばれました。
今では「脚気」という呼び方のほうが一般的です。
当時の明確なデータはありませんが、亡くなる人も少なくなかったと言われています。
のちに、これはビタミンB1不足が原因であることが明らかになりました。
胚芽部分に多いビタミンB1は、精米で取り除かれてしまうため、白米にするとわずかしか残りません。
当時の人々は一汁一菜が基本で、ご飯を大量にとり、おかずの量も数も少なかったこともビタミンB1不足の原因となっていました。
現代人も糖質の過剰摂取には要注意
現代においても糖質の過剰摂取や偏った食生活、ビタミンB1を消耗しやすい人は、潜在的にビタミンB1が欠乏する「脚気予備軍」とされています。
ビタミンB1が不足すると糖質がうまくエネルギーに変換されません。
脚気予備軍では、食欲がない・疲れやすい・だるいなどの症状が現れます。
さらに、長期間のビタミンB1不足は心臓や脳にも悪影響を与えるため、注意が必要です。
日常的な食事から適切に摂取することが求められます。
ビタミンB1の消耗
ビタミンB1は次のような理由で消耗されます。
- 甘いものやアルコールの摂り過ぎ
- 妊娠や授乳
- ストレス
- 過食
- 加齢
特に夏場は食欲が低下し、麺類や清涼飲料水など糖質の摂取が多くなるため、ビタミンB1の消耗が激しくなります。
また、運動時や頭や神経を酷使する時など、体はビタミンB1を多く消費するため、不足しがちです。
調理による消耗にもご注意を
ビタミンB1は水溶性で高温に弱いため、調理によって失われやすい栄養素です。
ゆでたり煮たりすると食材からゆで汁や煮汁に移ってしまうため、汁も飲むようにしましょう。
いっぽうで、生の貝類や甲殻類、淡水魚にはビタミンB1を分解してしまう酵素(チアミナーゼ)が含まれているため、十分に加熱して摂取する必要があります。
ビタミンB1が不足するとどうなる?
ビタミンB1が不足すると、エネルギー代謝が滞り、疲労感や無気力感が増加することがあります。
特に、脚気は神経系に影響を及ぼし、手足のしびれや筋肉の萎縮を引き起こす可能性があるのです。
さらに、長期間のビタミンB1不足は心臓や脳にも悪影響を与えるため、注意が必要です。
日常的な食事から適切にビタミンB1を摂取することが求められます。
ビタミンB1を含む食品
ビタミンB1を効率的に摂取するためには、日常の食事に工夫を凝らすことが重要です。
ビタミンB1は特に豚肉や全粒穀物、豆類に豊富に含まれており、これらの食品をバランスよく取り入れることで、必要な量を摂取できます。
食事から自然に摂取できるため、サプリメントに頼ることなく、健康を維持するための栄養源として活用できます。
ビタミンB1が豊富な食材
ビタミンB1を効率よく摂取するためには、特定の食材を意識的に選ぶことが有効です。
以下の食材はビタミンB1を豊富に含んでいます。
- 豚肉
- レンズ豆
- そば
- 玄米
- ナッツ類
- ブロッコリー
これらの食材を日常的に取り入れることで、健康を支える栄養素を確保することができます。
おすすめのビタミンB1食品
豚肉をはじめ、レンズ豆やそば、玄米などがビタミンB1を豊富に含む食品です。
特に、豚肉はビタミンB1の含有量が高く、効率的に摂取できます。
また、レンズ豆やそばも優れた選択肢で、食事にバリエーションを加えながらビタミンB1を摂取することができます。
これらの食品を使ったレシピを活用し、健康的な食生活を送ることが大切です。
調理法でビタミンB1を守る
ビタミンB1は水溶性のため、調理時に失われやすい栄養素です。
特に、茹でたり蒸したりする調理法が推奨されます。
例えば、豚肉を焼くよりも煮込む方が、ビタミンB1をより多く保持することができます。
また、調理時間を短縮し、食材を余分に煮込まないことがポイントです。
これにより、栄養素を効率的に摂取することが可能です。
ビタミンB1のサプリメント
ビタミンB1は食品から摂取するのが理想ですが、場合によってはサプリメントの利用も考慮する必要があります。
特に、食事から十分な量を摂取できない方や特別な健康状態の方にとって、サプリメントは手軽な栄養補給の手段となるのです。
適切な選択を行うことで、健康を維持するための一助となります。
サプリメントの選び方
ビタミンB1は単独ではなくビタミンB群(複合体・コンプレックス)でのサプリメントが望ましいです。
実際に市販のビタミンBサプリメントはほとんどが複合体になっています。
それはビタミンB群は単独よりも複合体で摂ったほうがB群全体が相乗的に効果を発揮するためです。
サプリメントの摂取タイミング
ビタミンB群は体内で貯蔵できません。
その点は鉄とは対照的です(鉄はフェリチンというタンパク質と一緒になって体内に貯蔵されます)。
したがって、いかに長く体内(血中)に留めることができるかが重要です。
血中に留まる時間が長ければ長いほどビタミンB群を必要とする臓器に届けられることになります。
単にビタミンB群を詰め合わせたサプリメントではなくビタミンB群の血中濃度推移や滞留時間などがオープンに情報提供されたサプリメントの利用をおすすめします。
ビタミンB1に関するQ&A
ビタミンB1について、以下に、よくある質問をまとめました。
ビタミンB1の過剰摂取は?
過剰摂取による重大な副作用は稀です。
万が一、体調に異変を感じた場合は、すぐに摂取を見直すことが大切です。
ビタミンB1の必要量は?
成人のビタミンB1の推奨摂取量は、男性が約1.2mg、女性が約1.1mgとされています。
これはあくまで欠乏症を防止するレベルと考え、年齢や生活習慣によって必然的に多くなると考えていいでしょう。
自分に合った量を意識することが重要です。
妊婦や授乳中の摂取について
妊婦や授乳中の方は、通常より多くのビタミンB1が必要です。
必要であれば医師と相談しながら適切な摂取を心がけ、健康な妊娠を支えるためにも、元気な赤ちゃんのためにもしっかりビタミンB1を確保することが大切です。
ルンブロキナーゼ
ルンブロキナーゼとは
ルンブロキナーゼは、北米由来のアカミミズ(Lumbricus rubellus)から抽出されるタンパク分解酵素で、日本人医学博士の美原恒氏(現宮崎大学医学部名誉教授)によって発見、1983年に国際血栓止血学会にて発表されました。
ルンブロキナーゼは、血栓を溶解する効果があるとされています。
国内よりもむしろ海外での評価が高く、韓国ではソウル大学の研究により正式な薬品として認可され「龍心」という名称で経口血栓溶解薬として存在しています。
発見のエピソード
1975年、新設された宮崎医科大学(現宮崎大学医学部)に教授として赴任した美原氏は動物実験施設長を兼任し、そこで多くのアメリカ産アカミミズを取り扱っていました。
このミミズで自身の研究主題である線溶(血管内で形成された血栓(血のかたまり)を溶かす生理機構)を確認してみたところ、ミミズの体液に線溶酵素が存在することが判明し、そこから本格的な研究が始まりました。
ルンブロキナーゼの主成分
ルンブルキナーゼは線溶酵素としてはt-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)やウロキナーゼとして有名なプラスミン系の酵素ではなく、学問的にはこれまで未知の種類の酵素、セリンプロテアーゼ系の新種であるタンパク分解酵素だとされています。
血栓を溶かす貴重な食品
ルンブロキナーゼは、血栓溶解(フィブリンに直接作用する)を医学的に証明した数少ない食品の1つです。
わたしたちが調べた限りにおいて血栓を溶かすことが医学的に証明されているもうひとつの食品は「ナットウキナーゼ」です。
ともに、日本人の医学博士によって発見されているところが興味深いですね。
ルンブロキナーゼの働き
血栓の溶解こそハイライト
なんらかの損傷で血管が傷ついた際に、止血(血液凝固)のために集まってきた血小板と赤血球を、フィブリン(繊維状タンパク質)があたかも細い針金のようにぐるぐる巻きにすることでそれらの塊が血栓となります。
血栓は、血流を阻害し、また血栓そのものが心臓や脳に飛ぶ(移動する)ことによって心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な健康問題を引き起こす原因となります。
この血栓形成は血管壁が傷ついたときだけに起こるものではなく、高血圧や高脂血症の影響などで血管の内皮が傷ついてざらざらになっているときにも起こります。
ルンブロキナーゼはフィブリンが存在する場合にのみ活性を発揮し、フィブリンに直接作用し溶解作用を発揮します。
同時にフィブリンの元であるフィブリノーゲンには作用しないので、血液がサラサラになりすぎるということ(出血)は生じません。
まさにこの点がルンブロキナーゼの働きのハイライトだと言えます。
また、ルンブロキナーゼには、t−PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)と呼ばれる人が本来持っている血栓溶解を促す物質の量を増大させる働きもあります。
上記のハイライトは、同じく日本人医学博士によって発見されたナットウキナーゼとも共通します。
経口で血栓を溶かすお薬は存在しない
経口で摂取する「血液をサラサラにするお薬」の代表例は、①抗血小板薬(例:アスピリン、エフィエントなど)、②抗凝固薬(例:ワーファリン、プラザキサなど)が挙げられますが、双方とも決して血栓を溶かすお薬ではなく、「血栓を出来にくくするお薬」です。
血栓溶解薬(例:ウロキナーゼなど)は非常に高額な注射薬であり、経口のお薬ではありません。
またこれらのお薬には出血という深刻な副作用があることにも注意が必要です。
副反応・禁忌などについて
ルンブロキナーゼの副反応や禁忌などは現時点では確認されていません。
ルンブロキナーゼの摂取方法
ルンブロキナーゼを効果的に摂取するには、現時点ではおそらくサプリメントを利用することになると思われます。
サプリメントの選び方
サプリメントを選ぶ際は、ルンブロキナーゼの含有量や成分表示を確認することは重要ですが、その製品でのヒト試験の結果を公開している企業のものが信頼が置けると思います。
一般的にはルンブロキナーゼが高用量の製品を選ぶと効果を得やすいと言われています。
摂取量の目安とタイミング
ルンブロキナーゼの摂取量は目的によって異なるとわたしたちは考えます。
効果を高めるには常にルンブロキナーゼの血中濃度を高い状態においておく必要があります。
個々人の必要量に関しては医師や栄養士に相談することをおすすめします。
血栓の存在は血液検査(D-ダイマーなど)で特定できます。
どんな人にルンブロキナーゼがおすすめか
ルンブロキナーゼは特に高齢者や生活習慣病に悩む方々におすすめです。
年齢を重ねるにつれて血液の流れが悪くなることがありますが、ルンブロキナーゼを取り入れることで血栓のリスクを軽減できる可能性があります。
高齢者
認知症の原因はアルツハイマー性が7割、血管(血栓)性が2割と言われています。
高齢者は血栓症のリスクが高まるため、認知症の予防にもルンブロキナーゼの摂取が効果的です。
がん患者さん
がん関連血栓症はがん患者さんにおける重要な合併症の一つです。
がん患者さんの死因の第一位は「がんの進行(Progression of cancer)」が70.9%。
それについで2位は血栓症が9.2%(動脈血栓症5.6%、静脈血栓症3.5%)となっています。
血圧の高い方
何らかの梗塞の既往がある人は当然として、高血圧の人はすでに全身の各所で微小塞栓による末梢の血管における血の詰まりが進んでいると考えられます。
ピル服用者
ピルの成分である卵胞ホルモン(エストロゲン)は、血栓を作りやすい性質を持っています。
PMS(月経前症候群)など、どうしてもピルを服用せざるをえない女性にも効果が期待できます。
血栓溶解により効果が出やすい器官
細動脈が密集していて血栓の影響を受けやすい器官は以下のとおりです。
- 脳
- 心臓
- 肺
- 下肢
- 眼
- 皮膚
- 胎盤
- 腎臓
- 膵臓
- 生殖器
ナットウキナーゼとの比較
ナットウキナーゼもルンブロキナーゼと同様の効果を持ち、その機序も共通する点が多いです。
特にフィブリンに直接作用する点や、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)を増大させる点などがそうです。
両者が拮抗するという可能性は低く、むしろ相互に補完し合う関係だと思われます。
ナットウキナーゼは主に納豆から得られる酵素で、食事からも摂取できますし、サプリメントからの摂取も可能です。
この両者を組み合わせることで、より高い効果が期待できるでしょう。
特に、血液の健康を重視する人には両者の併用が推奨されます。
ナットウキナーゼ
ナットウキナーゼとは
ナットウキナーゼは、我が国で千年以上前から食べられてきた納豆から抽出されるタンパク分解酵素で、日本人医学博士の須見洋行氏(現倉敷芸術科学大学名誉教授)によって発見、1986年に発表されました。
ナットウキナーゼは菌ではなく酵素で、血栓を溶解する効果があるとされています。
日本では古くから親しまれてきた納豆ですが、その健康効果が注目されるようになったのはナットウキナーゼの発見によるところが大きいと言えるでしょう。
納豆として食べる他にもサプリメントとして摂取できます。
強力な酵素としてのナットウキナーゼ
経口で摂取したナットウキナーゼは酵素であるにも関わらず、胃酸の影響を受けずになぜ効果を発揮するのか?という疑問に須見教授は以下のように回答されています、
「体内にはさまざまな消化液が分泌されます。酵素も当然のことながらその消化液で破壊されてしまうものがほとんどです。しかしナットウキナーゼは体内にある様々な消化液にも破壊されない酵素です。強酸性である胃酸にもアルカリ性である腸内でも元気に働きます。」(須見洋行教授。納豆文化村インタビューより)
ナットウキナーゼの主成分と量
ナットウキナーゼはアミノ酸や酵素を含んでいます。
ナットウキナーゼの量はFU(フィブリン分解ユニット)で表されます。
このFUはフィブリン(血栓)を溶かす酵素の力を表すのに最も適した測定単位として(財)日本健康・栄養食品協会(JHFE)に採用されています。
血栓を溶かす貴重な食品
ナットウキナーゼは、血栓溶解(フィブリンに直接作用する)を医学的に証明した数少ない食品の1つです。
わたしたちが調べた限りにおいて血栓を溶かすことが医学的に証明されているもうひとつの食品は「ルンブロキナーゼ」です。
ともに、日本人の医学博士によって発見されているところが興味深いですね。
市販の納豆との違い
ナットウキナーゼの量はFUによって定量化できるようになりました。
では、市販の納豆にどれだけのナットウキナーゼが入っているのか?という疑問に対しては、わたしたちは正確に答えられる情報を見つけることができませんでした。
巷間、おおむね納豆1パックに数百〜1500FU程度のナットウキナーゼが含まれているのではないかと言われています。
しかし納豆のパッケージにFUが掲載されていないことからも、おそらくナットウキナーゼ量を市販の納豆では安定的に揃えることが難しいのではないかと推測できます。
したがって、ナットウキナーゼを定量的に摂取したいときはパッケージにFU表記のあるサプリメントで摂るのが良いと思われます。
ナットウキナーゼの弱点
ナットウキナーゼの唯一の弱点は、熱です。
須見教授は以下のように述べられています。
「ナットウキナーゼは熱に弱いという性質があるんです。ですから納豆チャーハンなどで納豆自体に直接強い熱を加えてしまうと体内に入る前に壊れる事もあるんです。」(須見洋行教授。納豆文化村インタビューより)
納豆は生で食べるのがやはり良いようです。
ナットウキナーゼサプリメントも製造工程で熱を加えていないものを選ぶと良いですね。
ナットウキナーゼの働き
血栓の溶解こそハイライト
なんらかの損傷で血管が傷ついた際に、止血(血液凝固)のために集まってきた血小板と赤血球を、フィブリン(繊維状タンパク質)があたかも細い針金のようにぐるぐる巻きにすることでそれらの塊が血栓となります。
血栓は、血流を阻害し、また血栓そのものが心臓や脳に飛ぶ(移動する)ことによって心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な健康問題を引き起こす原因となります。
この血栓形成は血管壁が傷ついたときだけに起こるものではなく、高血圧や高脂血症の影響などで血管の内皮が傷ついてざらざらになっているときにも起こります。
ナットウキナーゼはフィブリンが存在する場合にのみ活性を発揮し、フィブリンに直接作用し溶解作用を発揮します。
同時にフィブリンの元であるフィブリノーゲンには作用しないので、血液がサラサラになりすぎるということ(出血)は生じません。まさにこの点がナットウキナーゼの働きのハイライトだと言えます。
また、ナットウキナーゼには、t−PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)と呼ばれる人が本来持っている血栓溶解を促す物質の量を増大させる働きや、血栓溶解阻害物質PAI-1(プラスミノーゲン・アクチベーター・インヒビター1)を不活化させる働きもあります。
上記のハイライトは、同じく日本人医学博士によって発見されたルンブロキナーゼとも共通します。
経口で血栓を溶かすお薬は存在しない
経口で摂取する「血液をサラサラにするお薬」の代表例は、①抗血小板薬(例:アスピリン、エフィエントなど)、②抗凝固薬(例:ワーファリン、プラザキサなど)が挙げられますが、双方とも血栓を溶かすお薬ではなく、「血栓を出来にくくするお薬」です。
血栓溶解薬(例:ウロキナーゼなど)は非常に高額な注射薬であり、経口のお薬ではありません。
またこれらのお薬には出血という深刻な副作用があることにも注意が必要です。
副反応などについて
よく、上記のお薬と納豆は一緒に食べてはいけません、と言われますが、それは納豆に含まれているビタミンKが血液を凝固させる作用を持つからです。
そのため通常、ナットウキナーゼサプリメントはビタミンKをあらかじめ除去しているのです。
注目されるナットウキナーゼ
スパイクタンパク質分解効果の発見
2022年8月に日本の城西大学と台湾のコンテックライフサイエンス社(ナットウキナーゼの世界的メーカー)の共同論文「SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対するナットウキナーゼの分解効果」(Tanikawa T, Kiba Y, Yu J, Hsu K, Chen S, Ishii A, Yokogawa T, Suzuki R, Inoue Y, Kitamura M. Degradative Effect of Nattokinase on Spike Protein of SARS-CoV-2. Molecules. 2022 Aug 24;27(17):5405. doi: 10.3390/molecules27175405. PMID: 36080170; PMCID: PMC9458005.)が発表されました。
以下に、要旨を掲載します。
Abstract
The coronavirus disease 2019 (COVID-19), caused by the severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2), emerged as a pandemic and has inflicted enormous damage on the lives of the people and economy of many countries worldwide. However, therapeutic agents against SARS-CoV-2 remain unclear. SARS-CoV-2 has a spike protein (S protein), and cleavage of the S protein is essential for viral entry. Nattokinase is produced by Bacillus subtilis var. natto and is beneficial to human health. In this study, we examined the effect of nattokinase on the S protein of SARS-CoV-2. When cell lysates transfected with S protein were incubated with nattokinase, the S protein was degraded in a dose- and time-dependent manner. Immunofluorescence analysis showed that S protein on the cell surface was degraded when nattokinase was added to the culture medium. Thus, our findings suggest that nattokinase exhibits potential for the inhibition of SARS-CoV-2 infection via S protein degradation.
要旨
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によるコロナウイルス病2019(COVID-19)がパンデミックとして出現し、世界各国の国民生活と経済に甚大な被害を与えている。
しかし、SARS-CoV-2に対する治療薬は未だ不明である。
SARS-CoV-2はスパイク蛋白(S蛋白)を持ち、S蛋白の切断がウイルス侵入に必須である。
ナットウキナーゼはBacillus subtilis var.nattoによって生産され、ヒトの健康に有益である。
本研究では、SARS-CoV-2のSタンパク質に対するナットウキナーゼの効果を調べた。
Sタンパク質を導入した細胞溶解液をナットウキナーゼとインキュベートしたところ、Sタンパク質は用量および時間依存的に分解された。
免疫蛍光分析から、ナットウキナーゼを培養液に加えると細胞表面のSタンパク質が分解されることが示された。
このことから、ナットウキナーゼはSタンパク質の分解を介してSARS-CoV-2感染を抑制する可能性が示唆された。(DeepL翻訳)
ナットウキナーゼの摂取方法
ナットウキナーゼの摂取方法は、主に納豆を食べることが一般的ですが、きちんと量を摂取したい場合、サプリメントとして摂るのも良い選択肢です。
効果を最大化するポイント
須見教授によると「ナットウキナーゼは4時間後に効果が最大となり、その後6~8時間は効果が持続することが判っています。特に夜食べることによってその効果を最大限に生かすことが出来ます。」ということです。
4時間後に効果が最大ということはわたしたちが行ったナットウキナーゼ製品のヒト試験でも明らかになりました。
効果を発揮するには血中にナットウキナーゼが常に滞留している状態を作り出す必要があり、理論的には4〜8時間おきに摂取するのが理想的と思われます。
サプリメントの選び方
サプリメントを選ぶ際は、ナットウキナーゼの含有量や成分表示を確認することは重要ですが、その製品でのヒト試験の結果を公開している企業のものが信頼が置けると思います。
一般的にはナットウキナーゼが高用量の製品を選ぶと効果を得やすいと言われています。
どんな人にナットウキナーゼがおすすめか
ナットウキナーゼは特に高齢者や生活習慣病に悩む方々におすすめです。
年齢を重ねるにつれて血液の流れが悪くなることがありますが、ナットウキナーゼを取り入れることで血栓のリスクを軽減できる可能性があります。
高齢者
認知症の原因はアルツハイマー性が7割、血管(血栓)性が2割と言われています。
高齢者は血栓症のリスクが高まるため、認知症の予防にもナットウキナーゼの摂取が効果的です。
がん患者さん
がん関連血栓症はがん患者さんにおける重要な合併症の一つです。
がん患者さんの死因の第一位は「がんの進行(Progression of cancer)」が70.9%。それについで2位は血栓症が9.2%(動脈血栓症5.6%、静脈血栓症3.5%)となっています。
血圧の高い方
何らかの梗塞の既往がある人は当然として、高血圧の人はすでに全身の各所で微小塞栓による末梢の血管における血の詰まりが進んでいると考えられます。
ピル服用者
ピルの成分である卵胞ホルモン(エストロゲン)は、血栓を作りやすい性質を持っています。
PMS(月経前症候群)など、どうしてもピルを服用せざるをえない女性にも効果が期待できます。
血栓溶解により効果が出やすい器官
細動脈が密集していて血栓の影響を受けやすい器官は以下のとおりです。
- 脳
- 心臓
- 肺
- 下肢
- 眼
- 皮膚
- 胎盤
- 腎臓
- 膵臓
- 生殖器
ルンブロキナーゼとの比較
ルンブロキナーゼはナットウキナーゼと同様の効果を持ち、その機序も共通する点が多いです。
特にフィブリンに直接作用する点や、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)を増大させる点などがそうです。
両者が拮抗するという可能性は低く、むしろ相互に補完し合う関係だと思われます。
ルンブロキナーゼは主にサプリメントからの摂取となります。この両者を組み合わせることで、より高い効果が期待できるでしょう。
特に、血液の健康を重視する人には両者の併用が推奨されます。
ナットウキナーゼに関するQ&A
摂取のタイミングは?
須見教授の「ナットウキナーゼは4時間後に効果が最大となり、その後6~8時間は効果が持続することが判っています。特に夜食べることによってその効果を最大限に生かすことが出来ます。」というご意見をもとにすると、効果が最長8時間持続するとして、1日3回、つまり8時間おきに摂取するのが理想と言えます。
しっかり効果を出すにはナットウキナーゼの血中濃度を常に高い状態においておく必要があります。
摂取のタイミングはわかりやすく言えば、朝昼晩の3回ということになります。
ナットウキナーゼのサプリメントの性能は千差万別といえますので、きちんと効果を確認したい場合は、医療機関での血液検査(D-ダイマーなど)で血栓の状態を判定されることをおすすめします。
妊娠中や授乳中に摂取しても良い?
妊娠中や授乳中の女性のナットウキナーゼの摂取について、わたしたちは特に問題はないと考えています。
アルコール解毒
アルコール解毒には、肝臓の代謝機能をサポートする多くの栄養素が関与しています。主な栄養素は次のとおりです。
ビタミンB群
ナイアシン(ビタミンB3)
ナイアシンはアルコールの代謝に関わる補酵素として重要です。
ナイアシンが不足すると、アルコール分解の効率が低下し、アセトアルデヒドの蓄積が進む可能性があります。
チアミン(ビタミンB1)
アルコール分解にはチアミンが必要です。アルコールはチアミンの吸収を阻害し、欠乏症を引き起こすことがあるため、適切な摂取が必要です。
リボフラビン(ビタミンB2)
肝臓の解毒酵素の働きをサポートし、アルコールの分解を助けます。
ピリドキシン(ビタミンB6)
アルコール分解に必要な酵素の活性化に関与し、肝機能を維持します。
抗酸化ビタミン
ビタミンC
抗酸化作用があり、アルコールによる酸化ストレスから肝臓を守ります。
ビタミンE
脂溶性抗酸化物質であり、細胞膜の脂質を酸化から保護します。
ミネラル
マグネシウム
アルコール代謝に関与する酵素の働きを助けるミネラルです。
亜鉛
アルコール分解酵素の活性化に必要であり、免疫機能もサポートします。
アミノ酸
グルタチオン
強力な抗酸化作用を持ち、肝臓での解毒作用をサポートします。システイン、グリシン、グルタミン酸から構成されます。
食品からの摂取
これらの栄養素はバランスの取れた食事から摂取することが重要です。具体的な食品例としては次のようなものがあります。
- ナイアシン:魚介類、レバー、ピーナッツ
- ビタミンB1:豚肉、全粒穀物、豆類
- ビタミンB2:乳製品、卵、緑色野菜
- ビタミンB6:鶏肉、魚、じゃがいも、バナナ
- ビタミンC:柑橘類、キウイ、パプリカ
- ビタミンE:ナッツ、種子、植物油
- マグネシウム:緑色野菜、ナッツ、全粒穀物
- 亜鉛:肉類、魚介類、豆類
- グルタチオン:ブロッコリー、ほうれん草、アボカド
アルコール解毒には、ナイアシンを含む多くのビタミンB群、抗酸化ビタミン、ミネラル、アミノ酸が必要です。
バランスの取れた食事を通じてこれらの栄養素を摂取し、肝臓の健康を維持することが重要です。
ナイアシン
ナイアシンは、ナイアシン(ニコチン酸)とナイアシンアミド(ニコチンアミド)の総称です。
水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種で、ビタミンB3とも呼ばれます。
ビタミンに分類されていますが、体内でも必須アミノ酸のトリプトファンから生合成されるので「ビタミンは体の中でつくることができない」というビタミンの定義の1つからは外れるビタミンです。
おおよその数値ですが、摂取したトリプトファンの1/60の量がナイアシンに生合成されます。
例えば、タンパク質を60g摂取すると約600㎎のトリプトファンを摂取し、ナイアシンは10㎎生合成されることになります。
ナイアシンは他のビタミンB群と同様に酵素をサポートする補酵素として、糖質、タンパク質、脂質のエネルギー代謝をスムーズにしています。
また、脳神経の働きを活性化する、皮膚を健康に保つ、血液の循環をよくするなど、体内で起こる様々な酵素反応に関与し、体の機能を正常に働かせるために重要な役割を果たしています。
ナイアシンの役割
エネルギー産生
ナイアシンは500種以上の酵素の補酵素として、エネルギー産生、糖質、脂質、タンパク質の代謝、肪酸やステロイドホルモンの生合成、DNAの修復や合成、アルコールの代謝など様々な機能に関わっています。
脂質と糖質の代謝
脂質や糖質の分解を助け、これらをエネルギーに転換します。
皮膚と粘膜の健康維持
ナイアシンは皮膚や粘膜の健康維持に重要です。
炎症を防ぎ、皮膚のバリア機能を保つ役割を果たします。代表的なナイアシン欠乏症として、ペラグラという疾患が知られています。
ペラグラでは顔や手足に炎症が起こり、下痢や食欲不振などの消化器症状や、めまいや抑うつ、情緒不安定などの精神症状も現れます。
現代の日本では通常の食事をしている限りナイアシンが欠乏することは稀ですが、慢性的にアルコールを多飲する人の中にペラグラの発症が認められています。
ナイアシンが不足すると口内炎、皮膚炎、舌炎といった症状が現れます。
神経症状の予防
神経系の正常な機能維持に貢献し、精神的な健康をサポートします。
ナイアシンは神経伝達物質の合成に関与し、うつや統合失調症の予防や改善に役立つ可能性があります。
ナイアシンが不足すると、精神障害、うつ、幻覚症状、イライラ、不安といった症状が現れます。
血管拡張とホットフラッシュ
ナイアシンは水溶性のため摂り過ぎた分は排泄され、過剰症になることはまずありませんが、ニコチン酸をサプリメントなどで一度に大量に摂取した場合、皮膚が赤くなったり、ピリピリとしたかゆみが生じたりすることがあります。
これはニコチン酸の血管拡張作用によるもので、「ホットフラッシュ」「ニコチン酸フラッシング」と呼ばれています。
ナイアシンアミドにはフラッシング作用はありません。また過剰摂取による下痢や嘔吐、肝機能障害なども報告されているので、耐容上限量を守るようにしましょう。
アルコール代謝
ナイアシンは、アルコールの代謝に重要な役割を果たします。
ナイアシンはアルコール脱水素酵素やアルデヒド脱水素酵素などの補酵素として働き、二日酔いの原因となるアセトアルデヒドを分解する酵素をサポートします。
そのため、アルコールを大量に摂取するとナイアシンが消費されて不足し、アルコールの分解が遅れて二日酔いになる可能性があります。
逆に、ナイアシンを十分に摂取しておけばアルコールの代謝がスムーズに行われ、悪酔いをしにくくなる効果も期待できます。
ナイアシンの臨床応用
ナイアシンは以下のような臨床応用が期待されています。
虚血性心疾患予防
心筋梗塞、脳梗塞後の予後改善
甲状腺機能亢進症の管理
アルコール依存症の治療
神経疾患の改善
ナイアシンを多く含む食品
ナイアシンはタンパク質をもとに体内で生成が可能ですが、ナイアシンそのものを含む食品として、豚レバー、鶏肉、かつおなどが挙げられます。
豚スモークレバー(100g):26.0mg
鶏ささみソテー(100mg):26.0mg
生かつお(春獲り100g):24.0mg
鶏むね肉皮付き焼き(100g):24.0mg
ナイアシンは多くの生理機能をサポートし、健康維持に重要なビタミンです。
適切な食事を通じて摂取し、特定の症状や病気に対する効果を期待する場合は医療専門家と相談することが推奨されます。
ビタミンC
ビタミンC(化学名「L-アスコルビン酸」)は、水溶性のビタミンで、皮膚や細胞のコラーゲンの合成や、鉄の吸収促進、免疫力の強化など、さまざまな役割を持つ栄養素です。
ヒトは体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。
ビタミンCが不足すると、倦怠感や疲労感、気力低下の症状が現れ、欠乏が続くと壊血病を引き起こします。
ビタミンCの役割
抗酸化作用
ビタミンCは強力な抗酸化物質で、細胞を活性酸素から守ります。
活性酸素は酸化ストレスを引き起こし、細胞損傷や老化、がんなどの原因になります。ビタミンCはこれを中和し、酸化ストレスを軽減します。
コラーゲン生成
ビタミンCは、骨や腱などの結合タンパク質であるコラーゲンの生成に欠かせない化合物です。
コラーゲンはアミノ酸とビタミンCを材料に、鉄分のサポートを受けて合成されます。
コラーゲン特有のアミノ酸である「ヒドロキシプロリン」を生成するには、ビタミンCと鉄分が必要な酵素が働いて水酸化させる必要があります。
ビタミンCが不足すると、コラーゲンが合成されず、皮膚や骨、血管といったコラーゲンを多く含む部位に障害が生じます。
免疫機能強化
ビタミンCは、体内に侵入したウイルスや細菌と戦う白血球やリンパ球に多く含まれており、白血球の働きを助けることで病原体を死滅させやすくします。
これにより感染症から体を守り、炎症を抑制します。風邪や感染症の予防に寄与します。
また、白血球がウイルスや細菌と戦う際に発生する活性酸素の働きを抑制する抗酸化作用も持ち、正常な細胞まで攻撃されないようにします。
ストレス対抗ホルモン生成
ビタミンCは、ストレスに対抗するホルモンであるコルチゾールの副腎での生成に関わっています。
ビタミンCが不足するとコルチゾールを十分に分泌できず、ストレスを感じたときに体が対応しづらくなるため、ストレスが多い人ほどビタミンCの需要が増大します。
美容とダイエット
ビタミンCは、紫外線を浴びると作られるメラニン色素の生成を抑制するほか、メラニン色素が酸化して濃くなるのを防ぐ抗酸化作用も持っています。
また、生成されたメラニン色素を還元して淡色化することで、シミを薄くする効果も期待できます。
また、エネルギー代謝を促進し、脂肪燃焼を助けることで、ダイエットをサポートします。ストレスホルモンのバランスを整え、過食を防ぎます。
こころの健康
ビタミンCは、神経伝達物質の合成に関与しています。
特に、興奮系の神経伝達物質であるノルアドレナリンの合成にはビタミンCが必要で、ノルアドレナリンは目覚めや集中力、積極性、興奮、不安、恐怖、痛みの軽減といった感覚をつかさどっています。
また、ビタミンCはドーパミンからノルアドレナリンを作る際にも使用されます。
ビタミンCの抗酸化作用は、脳細胞を酸化ストレスから守り、認知機能や気分の安定に寄与します。
がん予防と治療
ビタミンCはがん細胞の成長を抑制する可能性があるとされ、高濃度ビタミンC点滴療法が補完医療として注目されています。
ただし、科学的エビデンスには議論の余地があり、さらなる研究が必要です。
ビタミンCの摂取と吸収
ビタミンCは新鮮な果物や野菜(柑橘類、キウイ、パプリカ、ブロッコリー、イチゴなど)に豊富に含まれています。
少量ずつ複数回に分けて摂取することで吸収率が高まり、鉄分と一緒に摂取すると吸収が促進されます。
適切な調理法でビタミンCの損失を最小限に抑えることも重要です。
ビタミンCの推奨摂取量
成人の推奨摂取量は約100mg/日ですが、ストレス、感染症、喫煙者などはさらに多くのビタミンCが必要です。
ビタミンCの豊富な食品
新鮮な果物や野菜(柑橘類、トマト、ピーマン、ブロッコリー、キウイ、レモンなど)に豊富です。
アセロラ(酸味種・生100g):1,700mg
アセロラ(甘味種・生100g):800mg
トマピー(果実・生100mg):170mg
赤ピーマン(果実・生100mg):170mg
めキャベツ(結球葉・生100g):160mg
黄ピーマン(果実・生100mg):150mg
ブロッコリー(花序・生100g):140mg
キウイフルーツ(黄肉種・生100g):140mg
パセリ(葉・生100mg):120mg
レモン(全果・生100g):100mg
マンゴー(ドライ100g):69mg
ルッコラ(葉・生100g):66mg
モロヘイヤ(茎葉・生100g):65mg
いちご(生100g):62mg
パパイヤ(完熟・生100g):50mg
パインアップル(生100g):35mg
ビタミンCを食品から摂取する際は、調理法に注意しビタミンCの損失を最小限に抑えることを意識してください。
ビタミンCは熱に弱いため、高温になると分解されてしまうことがあります。
そのため、煮たり焼いたりして調理すると、食品のビタミンC含有率が低下します。
したがって 野菜やフルーツなど、そのまま食べられる食品は、できるだけ生の状態で摂るのがおすすめです。
また、少量ずつ複数回に分けて摂取することや、鉄分と一緒に摂取すると吸収が促進されます。
亜鉛
亜鉛(Zinc)とは
亜鉛は、原子番号30の金属元素元素で記号はZn。
人が健康を維持するために必要なミネラルで、体内に2〜3g存在します。
亜鉛は以下など、全身の細胞内に存在しています。
- 筋肉
- 骨
- 歯
- 肝臓
- 腎臓
- 皮膚
- 毛髪
- 消化管
- 膵臓
しかし、ヒトが自ら体内で亜鉛を生成することができません。
したがって亜鉛の補充にあたっては食事から摂取する必要があります。
亜鉛の働き
亜鉛は、全身の細胞に存在し、細胞の正常な分裂や、全身の新陳代謝を促し、発育や成長、傷の修復など、身体の維持にとても重要な役割を果たします。
身体に侵入してきた細菌やウイルスを防御する免疫システムにも寄与しています。
タンパク質やDNAなど、すべての細胞の中にある遺伝物質を合成するためにも必要です。
また、妊娠中、乳児期および小児期の身体は、十分に成長・発達するために亜鉛を必要とします。
亜鉛は適正な味覚や臭覚にも重要です。
亜鉛の働きを理解する際に必ず知っておきたいことは、酵素と補酵素の関係です。
酵素というのは、身体内で起こる様々な化学反応を助けるために必要ですが、補酵素の存在によって酵素はその役割を果たすことができます。
亜鉛は、300以上の酵素の補酵素となります。
これにより亜鉛は補酵素として以下のような生理機能に関与しています。
- 活性酸素の除去
- 健康な肌の維持
- 精⼦形成
- アルコールの分解
- 味覚維持
- ⼦供の成⻑に必須の代謝を促進
この役割を果たすには、酵素に含まれる十分な量の亜鉛が必要です。
亜鉛の働きを以下に羅列します。
- 細胞分裂を正常に行う
- 発育や新陳代謝を助ける
- 皮膚や髪の毛、粘膜の健康を保つ
- 生殖機能を維持する
- 味覚を維持する
- 免疫機能を正常に働かせる
- 300以上の酵素の反応を活性化する
- ホルモンの合成や分泌の調整
- DNA合成
- タンパク質合成
亜鉛の吸収と分布
亜鉛の吸収メカニズムと体内での分布は以下のとおりです。
亜鉛には鉄におけるフェリチンのような貯蔵タンパクがありません。
また、⽋乏に備える臓器もありません。(鉄における肝臓、カルシウムにおける⾻)
したがって亜鉛は食事から常に補い続ける必要があります。
亜鉛を補い続ける限り、亜鉛はそれを必要とする全身の臓器にしっかり届けられます。
健康な生活を送るためには貯蔵の効かない亜鉛を、常に十分に摂取することが重要です。
亜鉛が不足する理由
亜鉛が不足する主な理由は以下のとおりです。
1.亜鉛の摂取不足
糖質・炭水化物中心の食生活や、そもそも亜鉛を含まない加工食品中心の食生活では十分な亜鉛を摂取することができません。
また、亜鉛を豊富に含む肉類を避ける菜食主義者の方にも亜鉛欠乏が多くいらっしゃいます。
菜食主義者の方が好まれる穀物や豆類には亜鉛の吸収を妨げる物質(フィチン酸など)が含まれることも理由として挙げられます。
2.アルコールによる消費
アルコールの分解に亜鉛が大量に消費されます。
また、アルコールを好む方の食品の量や種類は、多くの場合亜鉛含有量の少ないものが多いです。
3.消化器疾患や特定の薬物の服用
消化管手術を受けた人、または潰瘍性大腸炎、クローン病などの消化器疾患を有する人。
これらの状態にある場合、体が吸収する亜鉛の量が減少し、尿中に失われる量が増加します。
特定の薬剤の長期服用(関節リウマチ、パーキンソン病、うつ病、糖尿病、甲状腺機能亢進症、痛風、てんかんなど)も不足の要因となる場合があります。
亜鉛が不足すると
亜鉛が不足すると、次のような症状が現れる可能性があります。
- 成長・発育障害
- 味覚障害
- 皮膚の炎症
- 口内炎
- 抜け毛
- 生殖機能の低下
- 食欲不振
- 貧血
近年発表された医学論文では日本人の10~30%が亜鉛欠乏のリスクがあるとされています。
特に高齢者と乳幼児においてそのリスクが高くなっています。
(Kumssa, D.B., Joy, E.J., Ander, E.L., Watts, M.J., Young, S.D., Walker, S., & Broadley, M.R. (2015) Sci. Rep., 5, 10974.)
亜鉛と乳幼児
日本での乳児の摂取推奨量は1日あたり2〜3mgとされています。(厚生労働省)
体重あたりに換算すると乳幼児の摂取推奨量は成人(成人女性で8 mg/日、成人男性で10 mg/日)の約3倍に達しますが、これは乳幼児の著しい成長に必要とされる亜鉛の量に見合った値です。
同等の亜鉛を母乳中に分泌するために授乳婦に対しても、+3 mg/日の付加が推奨量として定められています。
お母さんが摂取した亜鉛を、母乳を通してしっかりと乳幼児に届けてあげることが何より大切です。
このように多量の亜鉛を必要とする乳幼児は、ちょっとした摂取不足により容易に亜鉛欠乏に陥り、肌荒れなどの症状が出ますのでくれぐれもご注意ください。
亜鉛を多く含む食品
亜鉛は様々な食品に含まれており、健康な食生活を送るためにはこれらの食品を適切に摂取することが重要です。
ここでは、亜鉛を多く含む調理済み食品(やむを得ず一部「生」表記)と、その100g当たり含有量を紹介します。
(食品成分表2022年度版・女子栄養大学出版部より)
亜鉛
- 牡蠣
- 豚レバー
- 豚肉
- うなぎ
に多く含まれていますが、量的には上位は牡蠣の独占になります。
- 牡蠣(くん製油漬缶詰):100gで25.0mg
- 牡蠣(養殖水煮):100gで18.0mg
- 牡蠣(養殖生):100gで14.0mg
- 豚スモークレバー:100gで8.70mg
- 豚レバー(生):100gで6.90mg
(レバーの生食は禁じられていますが「焼き」の情報がないので参考までに掲載します) - 豚ヒレ赤肉(焼):100gで3.60mg
- うなぎ(蒲焼):100gで2.70mg
もしかして亜鉛不足?
亜鉛の不足は、さまざまな身体的な問題を引き起こすことがあります。
以下は亜鉛が不足している可能性をチェックするためのリストです。
これらの症状がある場合は、亜鉛の摂取のご検討をお勧めします。
亜鉛不足のチェックリスト
- 身長が伸びない:成長期なのに成長しない。
- 味覚がおかしい:食べ物の香りや味わいがわからない。
- 肌荒れ:皮膚が乾燥しやすくなった。
- 口内炎・口角炎ができやすい:頻繁に口の中や唇の端に炎症が生じる。
- 抜け毛:髪の毛が抜けやすくなった。
- 性欲の衰えを感じる:(特に男性)
- 貧血と指摘された:(特に女性)
- 怪我が治りにくい:傷がいつまで経っても治らない。
- 爪がおかしい:爪が弱くなり割れやすくなった。
これらに該当する場合、亜鉛の不足が原因かもしれません。
食事の見直しや、必要に応じてサプリメントの利用を検討し、医師や栄養士と相談することをお勧めします。
亜鉛は貯蔵が効かないにも関わらず、身体の機能を正常に保つ役割を果たしているため、日頃から十分な摂取が必要です。
鉄
鉄(Fe/Iron)とは
鉄は、原子番号26の金属元素元素で原子記号はFe。
人体に必要なミネラルの一種で、「鉄分」とも言われ、体内に3〜5gの量で血液中のヘモグロビンの中に多く存在します。
ヘモグロビンの役割は酸素を全身に運ぶことです。
鉄が不足すると全身に酸素を十分に運べなくなり鉄欠乏性貧血が生じます。
鉄欠乏性貧血の具体的な症状として、以下などありとあらゆる不定愁訴が確認されています。
- 頭痛
- めまい
- 集中力の低下
特に日本人女性は食事からの鉄の摂取量が諸先進国に比べて極めて低く、また、過去の日本人と比較しても低下しており、とても多くの方が鉄欠乏性貧血状態にあるのが現状です。
ヒトは自ら体内で鉄を生成することができません。
したがって鉄の補充にあたっては食事やサプリメントを用いて積極的に摂取する必要があります。
鉄の働き
鉄のもっとも大切な働きを一言でいうと、それは血液の材料となり酸素を全身に送り届けることです。
血液の主成分である赤血球は鉄を材料として作られます。
赤血球はヒトの体で最も多い細胞で、全細胞の約7割の25兆個を占め、1日に約2,000億個が新たにつくられています。(毎秒250万個の新しい赤血球がつくられています。)
1個の赤血球中には約2億8千万個のヘモグロビンが含まれています。
全身に酸素を運ぶヘモグロビンは、鉄からできている「ヘム」とたんぱく質でできている「グロビン」から構成されています。
このうち「ヘム」は酸素と結びつく力が強く、全身に酸素をいきわたらせる大切な役割を担っています。
血液が赤いのは、このヘムが赤色素を持っているからです。
ヒトの脳が酸素無しで生きられる時間はわずか3〜4分と言われています。
この点だけでも、酸素を運搬するヘモグロビン、特に「ヘム(=鉄)」がいかに重要かご理解いただけると思います。
その他の鉄の働きとしては、ビタミンB群のページで解説した、TCA回路(クエン酸回路とも呼ばれます)において、三大栄養素(糖質、脂質、タンパク質)からエネルギーを生み出す過程に欠かせないチトクローム酵素の活性化や、抗酸化に必要な酵素(カタラーゼやグルタチオンペルオキシターゼなど)の成分になることが挙げられます。
鉄の種類
栄養素としての鉄は、大きく分けて2つに分類することができます。
ヘム鉄(二価の鉄イオンとも言われFe2+と表されます)
肉や魚介類に多く含まれ、吸収率は50%とされています。
代表的食品(各食品100gあたり)
- 豚レバー(生) 13mg
- 鶏レバー(生) 9mg
- 牛もも赤肉(生) 2.8mg
- しじみ(生) 8.3mg
- あさり(生) 3.8mg
- かき(生) 2.1mg
- かつお(生) 1.9mg
(サプリメント原材料)
ヘム鉄
非ヘム鉄(三価の鉄イオンとも言われFe3+と表されます)
野菜や豆類に多く含まれ、吸収率は15%とされています。
代表的食品(各食品100gあたり)
- ほうれん草(生) 2mg
- 小松菜(生) 2.8mg
- 糸引き納豆 3.3mg
- 油揚げ(生) 3.2mg
- 卵黄(生) 4.8mg
(サプリメント原材料)
酵母鉄、乳酸菌鉄、クエン酸鉄、ピロリン酸鉄など
鉄の体内動態
吸収→運搬→貯蔵→造血、という鉄の体内動態を1枚のチャートにまとめました。
このチャートの解説・・・食品中に含まれる鉄のうち、ヘム鉄は還元型(Fe2+)であるため、たんぱく質が結合したそのままの形で十二指腸から空腸上部のHCP1(Heme Carrier Protein 1)から吸収されます。
非ヘム鉄(Fe3+)はそのままの形では吸収されず、小腸粘膜上皮上のチトクローム酵素B(DcytB)にてビタミンCにより還元された後、Fe2+としてDMT1(Divalent Metal Transporter 1)より吸収されます。
鉄結合性糖タンパク質のラクトフェリンは小腸管腔内の2個のFe3+と結合しラクトフェリンレセプターからエンドサイトーシスで吸収されます。
こうして小腸に吸収された鉄は、亜鉛を活性中心に持つフェロキシダーゼによって酸化されFe3+となり、フェリチンというタンパク質に包まれて貯蔵されます。
フェリチンから離れた鉄は還元されFe2+としてフェロポーチンを経て基底膜に出ます。
基底膜では銅を活性中心に持つへファスチンにより酸化されFe3+としてアポトランスフェリンというたんぱく質と結合してトランスフェリンとなり、血液に乗って体中に運ばれます。
輸送された鉄は、血色骨髄組織にて造血のプロセスで亜鉛や銅、ビタミンB群の助けを得てヘモグロビンとなって酸素の輸送に関与します。
鉄は筋肉中に酸素を蓄えるミオグロビンの構成成分にもなります。
赤血球の寿命は約120日と言われていますが、ビタミンB6には赤血球の老化を防ぐ効果があると言われています。
鉄は、肝臓や脾臓、骨髄などにフェリチンやヘモシデリンとして20~30%貯蔵されています。
赤血球の鉄が足りなくなるとこのフェリチンに包まれた貯蔵鉄が使われます。
このチャートを見ていただければ、鉄単体だけでは造血までを必ずしも完結できないことをおわかりいただけると思います。
造血に至るプロセスでは、ビタミンC、亜鉛、銅、別名「造血ビタミン」とも呼ばれるビタミンB群といった栄養素の助けが必要とされます。
ビタミンB群や亜鉛のページで紹介した肉類には、鉄をはじめビタミンB群や亜鉛が豊富に含まれています。
鉄の補充には肉類が適しているように、サプリメントで摂取する際も、造血をサポートする栄養素をできる限り同時に摂取することが望ましいです。
鉄が不足する理由
鉄が不足する理由を、鉄の摂取から排出までのプロセスごとに整理してみました。
1.摂取
- ■摂取量不足
摂食障害、過剰なダイエット、偏食、菜食主義、妊娠・授乳・成長による需要量増大
2.消化
- ■胃酸分泌量の低下(胃酸はFe3+をFe2+に還元する)
- ■胃内因子の不足(B12が吸収できなくなる)
- ■胃潰瘍・胃炎
- ■胃切除
- ■胃萎縮(ヘリコバクターピロリ菌)
- ■制酸剤の服用
3.吸収
- ■十二指腸切除
- ■小腸粘膜上皮の菲薄化(吸収不良症候群)
- ■十二指腸潰瘍
- ■吸収阻害成分の過剰摂取(Fe3+の摂取を阻害する)
不溶性食物繊維、フィチン酸、タンニン、リン酸塩
4.代謝
- ■トランスフェリン・レセプターの合成量不足
- ■セルロプラスミンやへファスチンの機能不全(銅・亜鉛の不足)
- ■フェロポーチンの機能不全
- ■ヘプシジンの産生過剰(感染症・炎症)
- ■フェリチンタンパクの合成不全
- ■ヘモジデリン鉄の過剰
- ■骨髄異常
- ■ポルフィリン合成不全
- ■グロブリン合成不全
- ■造血不良(ビタミンB12、葉酸の不足)
- ■赤血球寿命の短縮
5.排出
- ■月経・過多月経
- ■出血による鉄の喪失(消化管内出血含む。子宮筋腫・痔核など含む)
- ■炎症による鉄の逸脱
- ■溶血性貧血(スポーツによる貧血含む)
- ■多汗・多尿
- ■瀉血・血尿・喀血
このプロセスの中でも、特に入と出の部分、つまり摂取(入)量不足と月経(出)での喪失の影響が大きいことが以下より確認いただけると思います。
摂取量不足について
生理のある女性での月経での喪失について
鉄が不足すると
鉄が不足すると、次のような症状が現れる可能性があります。
- 頭痛
- めまいや立ちくらみ
- 集中力や記憶力の低下
- 全身の倦怠感
- 疲労感やだるさ
- 動悸
- 息切れ
- 顔色が悪い(蒼白)
- 爪の変形(爪が薄くよく割れる)
- 抜け毛
- のどのつまり
- 冷え性
- 異食症(氷を食べたくなる)
鉄と心の健康
鉄分が不足すると、抑うつを抑え気分を安定させる「セロトニン」や、ストレスを軽減する「ドーパミン」「ノルアドレナリン」といった脳の神経伝達物質の分泌が低下するため、落ち込んだりイライラしたり、気分のすぐれない状態が続くこともあります。
鉄と運動(発汗)
夏の酷暑下での発汗を伴う運動にはくれぐれもご用心ください。
汗からはかなりの量のミネラルが失われます。
その量は以下のとおりです。発汗時には鉄を含めミネラルを十分に摂取することが大切です。
鉄と妊娠・出産
厚生労働省によると、妊娠中の女性の鉄摂取推奨量は、妊娠初期で20代時の推奨量(6.5mg)に2.5mgを加えた8.5~9mg、妊娠中期~後期で9.5mgを加えた21~21.5mgです。
妊娠中は母体の赤血球細胞の産生が活発になり、血漿量や赤血球量が増加するため、胎児や胎盤の必要量を満たすために鉄の必要量が増加します。
赤ちゃんに十分な酸素や栄養を届けるためにも、積極的に鉄を摂取しましょう。
鉄を多く含む食品
鉄は様々な食品に含まれており、健康な食生活を送るためにはこれらの食品を適切に摂取することが重要です。
ここでは、鉄(ヘム鉄)を多く含む調理済み食品(やむを得ず一部「生」表記)と、その100g当たり含有量を紹介します。(食品成分表2022年度版・女子栄養大学出版部より)
鉄
- 豚レバー
- 牛肉
- 馬肉
に多く含まれています。量的には以下のとおりです。
- 豚スモークレバー:100gで20.0mg
- 豚レバー(生):100gで13.0mg
(レバーの生食は禁じられていますが「焼き」の情報がないので参考までに掲載します) - 豚レバーペースト:100gで7.7mg
- 牛ビーフジャーキー:100gで6.4mg
- 馬赤肉(生):100gで4.3mg
- 牛横隔膜(ゆで):100gで4.2mg
- 牛もも皮下脂肪無し(焼き):100gで3.8mg
もしかして鉄不足?
鉄の不足は、さまざまな身体的な問題を引き起こすことはご理解いただけたと思います。
以下は鉄が不足している可能性をチェックするためのリストです。
これらの症状がある場合は、鉄の摂取、それもヘム鉄としての鉄の摂取のご検討をお勧めします。
鉄不足のチェックリスト
- 頭痛がひどい
頻繁に頭痛、耳鳴りがする。 - めまいや立ちくらみがする
ふらふらして立っていられないことがある。 - 集中力や記憶力が低下した
注意散漫になった気がする。 - 全身がしんどい
朝起きるのがしんどく、日中もずっとしんどい。 - 疲労感・だるさがある
寝ても疲れがとれない。 - 動悸、息切れがする
普段の階段の上り下りだけで息が切れるようになった。 - 顔色が悪い
顔が青白くまぶたの裏が白っぽい。 - 爪がおかしい
爪が薄く弱くよく割れる 。 - 髪の毛がよく抜ける
洗髪が怖いくらい髪が抜けるようになった。 - のどが詰まったようになる
サプリを飲み込めない。 - 冷え性になった
四肢が我慢出来ないほど冷える。 - 無性に氷が食べたくなる
無意識でバリバリ氷を食べることがある。
これらに該当する場合、鉄の不足が原因かもしれません。
食事の見直しや、必要に応じてサプリメントの利用を検討し、医師や栄養士と相談することをお勧めします。
鉄不足は全身にありとあらゆる不定愁訴を引き起こします。特に有経の女性は日頃から十分な摂取が必要です。
サルコペニアとは?
サルコペニア(Sarcopenia)は、主に加齢による筋肉量の減少と、それに伴う筋力低下および身体機能の低下を指します。
ギリシャ語の「sarx(筋肉)」と「penia(減少)」を組み合わせた言葉です。
サルコペニアの原因
人の筋肉量は40歳を境にして徐々に減少していく傾向があり、60歳を超えるとその減少率は加速します。
サルコペニアは、タンパク質の摂取不足と運動量の減少によって、作られる筋肉よりも分解される筋肉の方が多くなることが原因で、主に2つに分類されます。
- 一次性サルコペニア
加齢に伴うもの。 - 二次性サルコペニア
活動不足、栄養不足、慢性疾患(例えば、心疾患、糖尿病、がんなど)によるもの。
サルコペニアの診断基準
サルコペニアの診断には以下の基準が用いられます。
- 筋肉量測定
生体電気インピーダンス法(BIA法)や二重エネルギーX線吸収法(DXA法)を用いて測定します。 - 握力測定
男性28kg未満、女性18kg未満 - 歩行速度測定
1秒あたり0.8m未満
これらの基準に基づき、筋肉量の低下が確認され、筋力または身体機能のいずれかが低下している場合、サルコペニアと診断されます。
サルコペニアの症状と影響
サルコペニアが進行すると、以下のような症状が現れます。
- 筋力低下による日常生活動作の困難(立ち上がり、歩行など)
- 転倒や骨折のリスク増加
- 身体機能障害や生活の質(QOL)の低下
参考文献:サルコペニア(筋肉減少症)について|イノルト整形外科
サルコペニアの予防と対策
- 適切な栄養摂取
高タンパク質の食事を心がける。
ビタミンDやオメガ3脂肪酸などのサプリメントの活用。 - 定期的な運動
筋力トレーニング(ハーフスクワット、アームレッグクロスレイズ、プッシュアップなど)
有酸素運動(ウォーキング、ジョギングなど)を週に150分以上行う。 - 早期発見と早期介入
定期的な健康診断と筋肉量・筋力のチェック。
早期に症状を発見し、医療機関で適切な治療を受ける
サルコペニアと栄養
タンパク質(必須アミノ酸、分岐鎖アミノ酸)
タンパク質を構成するアミノ酸の中でも分岐鎖アミノ酸(BCAA)は筋肉を作るために必要な栄養素です。
具体的には、以下の3つの必須アミノ酸のことを指します。
- バリン
- ロイシン
- イソロイシン
中でも「ロイシン」には筋タンパクの合成を促進する働きがあると言われています。
BCAAやロイシンを摂取すると、体に筋肉を合成するようにとのシグナルが送られます。
このシグナルに反応して、人間の体は筋肉を合成しようとします。
その際に重要なのが筋肉を構成するアミノ酸である必須アミノ酸です。
せっかく体が筋肉を合成しようとしても筋肉の材料となる必須アミノ酸がなければ筋肉合成は効率的に進まないのです。
サルコペニア対策には、食事の際にはただ単にカロリーを摂取するのではなく、ロイシンや必須アミノ酸が多く含まれる食事を取ることが重要と言えるでしょう。
まとめ
サルコペニアは高齢者に多く見られる筋肉量減少および筋力低下の状態であり、適切な予防と対策が重要です。
栄養、運動、早期発見の3つの柱を中心に、生活習慣の改善を図りましょう。