ルンブロキナーゼ
ルンブロキナーゼとは
ルンブロキナーゼは、北米由来のアカミミズ(Lumbricus rubellus)から抽出されるタンパク分解酵素で、日本人医学博士の美原恒氏(現宮崎大学医学部名誉教授)によって発見、1983年に国際血栓止血学会にて発表されました。
ルンブロキナーゼは、血栓を溶解する効果があるとされています。
国内よりもむしろ海外での評価が高く、韓国ではソウル大学の研究により正式な薬品として認可され「龍心」という名称で経口血栓溶解薬として存在しています。
発見のエピソード
1975年、新設された宮崎医科大学(現宮崎大学医学部)に教授として赴任した美原氏は動物実験施設長を兼任し、そこで多くのアメリカ産アカミミズを取り扱っていました。
このミミズで自身の研究主題である線溶(血管内で形成された血栓(血のかたまり)を溶かす生理機構)を確認してみたところ、ミミズの体液に線溶酵素が存在することが判明し、そこから本格的な研究が始まりました。
ルンブロキナーゼの主成分
ルンブルキナーゼは線溶酵素としてはt-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)やウロキナーゼとして有名なプラスミン系の酵素ではなく、学問的にはこれまで未知の種類の酵素、セリンプロテアーゼ系の新種であるタンパク分解酵素だとされています。
血栓を溶かす貴重な食品
ルンブロキナーゼは、血栓溶解(フィブリンに直接作用する)を医学的に証明した数少ない食品の1つです。
わたしたちが調べた限りにおいて血栓を溶かすことが医学的に証明されているもうひとつの食品は「ナットウキナーゼ」です。
ともに、日本人の医学博士によって発見されているところが興味深いですね。
ルンブロキナーゼの働き
血栓の溶解こそハイライト
なんらかの損傷で血管が傷ついた際に、止血(血液凝固)のために集まってきた血小板と赤血球を、フィブリン(繊維状タンパク質)があたかも細い針金のようにぐるぐる巻きにすることでそれらの塊が血栓となります。
血栓は、血流を阻害し、また血栓そのものが心臓や脳に飛ぶ(移動する)ことによって心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な健康問題を引き起こす原因となります。
この血栓形成は血管壁が傷ついたときだけに起こるものではなく、高血圧や高脂血症の影響などで血管の内皮が傷ついてざらざらになっているときにも起こります。
ルンブロキナーゼはフィブリンが存在する場合にのみ活性を発揮し、フィブリンに直接作用し溶解作用を発揮します。
同時にフィブリンの元であるフィブリノーゲンには作用しないので、血液がサラサラになりすぎるということ(出血)は生じません。
まさにこの点がルンブロキナーゼの働きのハイライトだと言えます。
また、ルンブロキナーゼには、t−PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)と呼ばれる人が本来持っている血栓溶解を促す物質の量を増大させる働きもあります。
上記のハイライトは、同じく日本人医学博士によって発見されたナットウキナーゼとも共通します。
経口で血栓を溶かすお薬は存在しない
経口で摂取する「血液をサラサラにするお薬」の代表例は、①抗血小板薬(例:アスピリン、エフィエントなど)、②抗凝固薬(例:ワーファリン、プラザキサなど)が挙げられますが、双方とも決して血栓を溶かすお薬ではなく、「血栓を出来にくくするお薬」です。
血栓溶解薬(例:ウロキナーゼなど)は非常に高額な注射薬であり、経口のお薬ではありません。
またこれらのお薬には出血という深刻な副作用があることにも注意が必要です。
副反応・禁忌などについて
ルンブロキナーゼの副反応や禁忌などは現時点では確認されていません。
ルンブロキナーゼの摂取方法
ルンブロキナーゼを効果的に摂取するには、現時点ではおそらくサプリメントを利用することになると思われます。
サプリメントの選び方
サプリメントを選ぶ際は、ルンブロキナーゼの含有量や成分表示を確認することは重要ですが、その製品でのヒト試験の結果を公開している企業のものが信頼が置けると思います。
一般的にはルンブロキナーゼが高用量の製品を選ぶと効果を得やすいと言われています。
摂取量の目安とタイミング
ルンブロキナーゼの摂取量は目的によって異なるとわたしたちは考えます。
効果を高めるには常にルンブロキナーゼの血中濃度を高い状態においておく必要があります。
個々人の必要量に関しては医師や栄養士に相談することをおすすめします。
血栓の存在は血液検査(D-ダイマーなど)で特定できます。
どんな人にルンブロキナーゼがおすすめか
ルンブロキナーゼは特に高齢者や生活習慣病に悩む方々におすすめです。
年齢を重ねるにつれて血液の流れが悪くなることがありますが、ルンブロキナーゼを取り入れることで血栓のリスクを軽減できる可能性があります。
高齢者
認知症の原因はアルツハイマー性が7割、血管(血栓)性が2割と言われています。
高齢者は血栓症のリスクが高まるため、認知症の予防にもルンブロキナーゼの摂取が効果的です。
がん患者さん
がん関連血栓症はがん患者さんにおける重要な合併症の一つです。
がん患者さんの死因の第一位は「がんの進行(Progression of cancer)」が70.9%。
それについで2位は血栓症が9.2%(動脈血栓症5.6%、静脈血栓症3.5%)となっています。
血圧の高い方
何らかの梗塞の既往がある人は当然として、高血圧の人はすでに全身の各所で微小塞栓による末梢の血管における血の詰まりが進んでいると考えられます。
ピル服用者
ピルの成分である卵胞ホルモン(エストロゲン)は、血栓を作りやすい性質を持っています。
PMS(月経前症候群)など、どうしてもピルを服用せざるをえない女性にも効果が期待できます。
血栓溶解により効果が出やすい器官
細動脈が密集していて血栓の影響を受けやすい器官は以下のとおりです。
- 脳
- 心臓
- 肺
- 下肢
- 眼
- 皮膚
- 胎盤
- 腎臓
- 膵臓
- 生殖器
ナットウキナーゼとの比較
ナットウキナーゼもルンブロキナーゼと同様の効果を持ち、その機序も共通する点が多いです。
特にフィブリンに直接作用する点や、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)を増大させる点などがそうです。
両者が拮抗するという可能性は低く、むしろ相互に補完し合う関係だと思われます。
ナットウキナーゼは主に納豆から得られる酵素で、食事からも摂取できますし、サプリメントからの摂取も可能です。
この両者を組み合わせることで、より高い効果が期待できるでしょう。
特に、血液の健康を重視する人には両者の併用が推奨されます。
医師、医学博士、栄養療法ドクター
2002年 金沢医科大学卒業 同年、医師免許取得
2008年 博士号取得 同年、金沢医科大学助教
その後整形外科専門医、整形外科リウマチ専門医取得
2009年 公立宇出津総合病院整形外科医長、
リハビリテーション科医長
2013年 神奈川県内の病院に勤務
2017年 回復期リハビリテーション専従医取得
2022年3月 病院勤務を辞め独立
2022号9月 株式会社ニュートライズ起業