NUTRIZE

用語集

ナットウキナーゼ

ナットウキナーゼとは

ナットウキナーゼは、我が国で千年以上前から食べられてきた納豆から抽出されるタンパク分解酵素で、日本人医学博士の須見洋行氏(現倉敷芸術科学大学名誉教授)によって発見、1986年に発表されました。

ナットウキナーゼは菌ではなく酵素で、血栓を溶解する効果があるとされています。

日本では古くから親しまれてきた納豆ですが、その健康効果が注目されるようになったのはナットウキナーゼの発見によるところが大きいと言えるでしょう。

納豆として食べる他にもサプリメントとして摂取できます。

強力な酵素としてのナットウキナーゼ

経口で摂取したナットウキナーゼは酵素であるにも関わらず、胃酸の影響を受けずになぜ効果を発揮するのか?という疑問に須見教授は以下のように回答されています、

「体内にはさまざまな消化液が分泌されます。酵素も当然のことながらその消化液で破壊されてしまうものがほとんどです。しかしナットウキナーゼは体内にある様々な消化液にも破壊されない酵素です。強酸性である胃酸にもアルカリ性である腸内でも元気に働きます。」(須見洋行教授。納豆文化村インタビューより)

ナットウキナーゼの主成分と量

ナットウキナーゼはアミノ酸や酵素を含んでいます。

ナットウキナーゼの量はFU(フィブリン分解ユニット)で表されます。

このFUはフィブリン(血栓)を溶かす酵素の力を表すのに最も適した測定単位として(財)日本健康・栄養食品協会(JHFE)に採用されています。

血栓を溶かす貴重な食品

ナットウキナーゼは、血栓溶解(フィブリンに直接作用する)を医学的に証明した数少ない食品の1つです。

わたしたちが調べた限りにおいて血栓を溶かすことが医学的に証明されているもうひとつの食品は「ルンブロキナーゼ」です。

ともに、日本人の医学博士によって発見されているところが興味深いですね。

市販の納豆との違い

ナットウキナーゼの量はFUによって定量化できるようになりました。

では、市販の納豆にどれだけのナットウキナーゼが入っているのか?という疑問に対しては、わたしたちは正確に答えられる情報を見つけることができませんでした。

巷間、おおむね納豆1パックに数百〜1500FU程度のナットウキナーゼが含まれているのではないかと言われています。

しかし納豆のパッケージにFUが掲載されていないことからも、おそらくナットウキナーゼ量を市販の納豆では安定的に揃えることが難しいのではないかと推測できます。

したがって、ナットウキナーゼを定量的に摂取したいときはパッケージにFU表記のあるサプリメントで摂るのが良いと思われます。

ナットウキナーゼの弱点

ナットウキナーゼの唯一の弱点は、熱です。

須見教授は以下のように述べられています。

「ナットウキナーゼは熱に弱いという性質があるんです。ですから納豆チャーハンなどで納豆自体に直接強い熱を加えてしまうと体内に入る前に壊れる事もあるんです。」(須見洋行教授。納豆文化村インタビューより)

納豆は生で食べるのがやはり良いようです。

ナットウキナーゼサプリメントも製造工程で熱を加えていないものを選ぶと良いですね。

ナットウキナーゼの働き

血栓の溶解こそハイライト

なんらかの損傷で血管が傷ついた際に、止血(血液凝固)のために集まってきた血小板と赤血球を、フィブリン(繊維状タンパク質)があたかも細い針金のようにぐるぐる巻きにすることでそれらの塊が血栓となります。

血栓は、血流を阻害し、また血栓そのものが心臓や脳に飛ぶ(移動する)ことによって心筋梗塞や脳梗塞などの深刻な健康問題を引き起こす原因となります。

この血栓形成は血管壁が傷ついたときだけに起こるものではなく、高血圧や高脂血症の影響などで血管の内皮が傷ついてざらざらになっているときにも起こります。

ナットウキナーゼはフィブリンが存在する場合にのみ活性を発揮し、フィブリンに直接作用し溶解作用を発揮します。

同時にフィブリンの元であるフィブリノーゲンには作用しないので、血液がサラサラになりすぎるということ(出血)は生じません。まさにこの点がナットウキナーゼの働きのハイライトだと言えます。

また、ナットウキナーゼには、t−PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)と呼ばれる人が本来持っている血栓溶解を促す物質の量を増大させる働きや、血栓溶解阻害物質PAI-1(プラスミノーゲン・アクチベーター・インヒビター1)を不活化させる働きもあります。

上記のハイライトは、同じく日本人医学博士によって発見されたルンブロキナーゼとも共通します。

経口で血栓を溶かすお薬は存在しない

経口で摂取する「血液をサラサラにするお薬」の代表例は、①抗血小板薬(例:アスピリン、エフィエントなど)、②抗凝固薬(例:ワーファリン、プラザキサなど)が挙げられますが、双方とも血栓を溶かすお薬ではなく、「血栓を出来にくくするお薬」です。

血栓溶解薬(例:ウロキナーゼなど)は非常に高額な注射薬であり、経口のお薬ではありません。

またこれらのお薬には出血という深刻な副作用があることにも注意が必要です。

副反応などについて

よく、上記のお薬と納豆は一緒に食べてはいけません、と言われますが、それは納豆に含まれているビタミンKが血液を凝固させる作用を持つからです。

そのため通常、ナットウキナーゼサプリメントはビタミンKをあらかじめ除去しているのです。

関連記事:ルンブロキナーゼ

注目されるナットウキナーゼ

スパイクタンパク質分解効果の発見

2022年8月に日本の城西大学と台湾のコンテックライフサイエンス社(ナットウキナーゼの世界的メーカー)の共同論文「SARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対するナットウキナーゼの分解効果」(Tanikawa T, Kiba Y, Yu J, Hsu K, Chen S, Ishii A, Yokogawa T, Suzuki R, Inoue Y, Kitamura M. Degradative Effect of Nattokinase on Spike Protein of SARS-CoV-2. Molecules. 2022 Aug 24;27(17):5405. doi: 10.3390/molecules27175405. PMID: 36080170; PMCID: PMC9458005.)が発表されました。

以下に、要旨を掲載します。

Abstract

The coronavirus disease 2019 (COVID-19), caused by the severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2), emerged as a pandemic and has inflicted enormous damage on the lives of the people and economy of many countries worldwide. However, therapeutic agents against SARS-CoV-2 remain unclear. SARS-CoV-2 has a spike protein (S protein), and cleavage of the S protein is essential for viral entry. Nattokinase is produced by Bacillus subtilis var. natto and is beneficial to human health. In this study, we examined the effect of nattokinase on the S protein of SARS-CoV-2. When cell lysates transfected with S protein were incubated with nattokinase, the S protein was degraded in a dose- and time-dependent manner. Immunofluorescence analysis showed that S protein on the cell surface was degraded when nattokinase was added to the culture medium. Thus, our findings suggest that nattokinase exhibits potential for the inhibition of SARS-CoV-2 infection via S protein degradation.

要旨

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によるコロナウイルス病2019(COVID-19)がパンデミックとして出現し、世界各国の国民生活と経済に甚大な被害を与えている。
しかし、SARS-CoV-2に対する治療薬は未だ不明である。
SARS-CoV-2はスパイク蛋白(S蛋白)を持ち、S蛋白の切断がウイルス侵入に必須である。
ナットウキナーゼはBacillus subtilis var.nattoによって生産され、ヒトの健康に有益である。
本研究では、SARS-CoV-2のSタンパク質に対するナットウキナーゼの効果を調べた。
Sタンパク質を導入した細胞溶解液をナットウキナーゼとインキュベートしたところ、Sタンパク質は用量および時間依存的に分解された。
免疫蛍光分析から、ナットウキナーゼを培養液に加えると細胞表面のSタンパク質が分解されることが示された。
このことから、ナットウキナーゼはSタンパク質の分解を介してSARS-CoV-2感染を抑制する可能性が示唆された。(DeepL翻訳)

ナットウキナーゼの摂取方法

ナットウキナーゼの摂取方法は、主に納豆を食べることが一般的ですが、きちんと量を摂取したい場合、サプリメントとして摂るのも良い選択肢です。

効果を最大化するポイント

須見教授によると「ナットウキナーゼは4時間後に効果が最大となり、その後6~8時間は効果が持続することが判っています。特に夜食べることによってその効果を最大限に生かすことが出来ます。」ということです。

4時間後に効果が最大ということはわたしたちが行ったナットウキナーゼ製品のヒト試験でも明らかになりました。

効果を発揮するには血中にナットウキナーゼが常に滞留している状態を作り出す必要があり、理論的には4〜8時間おきに摂取するのが理想的と思われます。

サプリメントの選び方

サプリメントを選ぶ際は、ナットウキナーゼの含有量や成分表示を確認することは重要ですが、その製品でのヒト試験の結果を公開している企業のものが信頼が置けると思います。

一般的にはナットウキナーゼが高用量の製品を選ぶと効果を得やすいと言われています。

どんな人にナットウキナーゼがおすすめか

ナットウキナーゼは特に高齢者や生活習慣病に悩む方々におすすめです。

年齢を重ねるにつれて血液の流れが悪くなることがありますが、ナットウキナーゼを取り入れることで血栓のリスクを軽減できる可能性があります。

高齢者

認知症の原因はアルツハイマー性が7割、血管(血栓)性が2割と言われています。

高齢者は血栓症のリスクが高まるため、認知症の予防にもナットウキナーゼの摂取が効果的です。

がん患者さん

がん関連血栓症はがん患者さんにおける重要な合併症の一つです。

がん患者さんの死因の第一位は「がんの進行(Progression of cancer)」が70.9%。それについで2位は血栓症が9.2%(動脈血栓症5.6%、静脈血栓症3.5%)となっています。

血圧の高い方

何らかの梗塞の既往がある人は当然として、高血圧の人はすでに全身の各所で微小塞栓による末梢の血管における血の詰まりが進んでいると考えられます。

ピル服用者

ピルの成分である卵胞ホルモン(エストロゲン)は、血栓を作りやすい性質を持っています。

PMS(月経前症候群)など、どうしてもピルを服用せざるをえない女性にも効果が期待できます。

血栓溶解により効果が出やすい器官

細動脈が密集していて血栓の影響を受けやすい器官は以下のとおりです。

  • 心臓
  • 下肢
  • 皮膚
  • 胎盤
  • 腎臓
  • 膵臓
  • 生殖器

ルンブロキナーゼとの比較

ルンブロキナーゼはナットウキナーゼと同様の効果を持ち、その機序も共通する点が多いです。

特にフィブリンに直接作用する点や、t-PA(組織プラスミノーゲンアクチベーター)を増大させる点などがそうです。

両者が拮抗するという可能性は低く、むしろ相互に補完し合う関係だと思われます。

ルンブロキナーゼは主にサプリメントからの摂取となります。この両者を組み合わせることで、より高い効果が期待できるでしょう。

特に、血液の健康を重視する人には両者の併用が推奨されます。

ナットウキナーゼに関するQ&A

摂取のタイミングは?

須見教授の「ナットウキナーゼは4時間後に効果が最大となり、その後6~8時間は効果が持続することが判っています。特に夜食べることによってその効果を最大限に生かすことが出来ます。」というご意見をもとにすると、効果が最長8時間持続するとして、1日3回、つまり8時間おきに摂取するのが理想と言えます。

しっかり効果を出すにはナットウキナーゼの血中濃度を常に高い状態においておく必要があります。

摂取のタイミングはわかりやすく言えば、朝昼晩の3回ということになります。

ナットウキナーゼのサプリメントの性能は千差万別といえますので、きちんと効果を確認したい場合は、医療機関での血液検査(D-ダイマーなど)で血栓の状態を判定されることをおすすめします。

妊娠中や授乳中に摂取しても良い?

妊娠中や授乳中の女性のナットウキナーゼの摂取について、わたしたちは特に問題はないと考えています。

医師、医学博士、栄養療法ドクター

富所 潤 Jun Tomidokoro

2002年 金沢医科大学卒業 同年、医師免許取得
2008年 博士号取得 同年、金沢医科大学助教
その後整形外科専門医、整形外科リウマチ専門医取得
2009年 公立宇出津総合病院整形外科医長、
     リハビリテーション科医長
2013年 神奈川県内の病院に勤務
2017年 回復期リハビリテーション専従医取得
2022年3月 病院勤務を辞め独立
2022号9月 株式会社ニュートライズ起業