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用語集

ビタミンD

ビタミンD(VitaminD)とは

ビタミンDは、脂溶性のビタミンで、カルシウムの吸収を助ける重要な役割を持っています。

ビタミンDは主に日光の紫外線にさらされることで皮膚内で生成されますが、食品(主に魚介類)から摂取することもできます。

ビタミンDが不足すると、骨が脆くなる病気であるくる病や骨粗鬆症のリスクが高まります

また、以下で解説するように現在、世界中の研究者によってビタミンDのさまざまな働きが解明されています。

ビタミンDの種類と特性

ビタミンDのバリエーション

ビタミンDにはD2からD7までの6種類があります。

主要なビタミンD:D2とD3

人にとって重要なビタミンDはD2とD3の2つです。

D2とD3の働きは同じと言われていますが、最近ではビタミンD3の方がD2よりも効果が強いとされる意見もあります

ビタミンDを得る2つの主な方法

人がビタミンDを得るには2つの方法があります。

①食品から摂取する方法と、②日光を浴びてビタミンDを生成する方法です。

①食品からビタミンDを摂取する

ビタミンDは魚介類やきのこ類に多く含まれています

穀類や多くの野菜、肉類には少ないです。以下は、ビタミンDを多く含む食品の例と、その含有量です。

魚介類

  1. サケ – 生のサケ(約100g)で約30μgのビタミンDを含むことがあります。これは約1200IUに相当します。
  2. サンマ – 生のサンマ(約100g)あたり約16μgのビタミンDを含むことがあります。これは約640IUに相当します。

魚介類はビタミンDの豊富な天然の源です。特に脂の多い魚にはビタミンDが多く含まれています。

きのこ類

きくらげ – 日光に晒されたきくらげはビタミンDを豊富に含むことがあります。

100gあたり約85.0μgのビタミンDを含むとされており、これは約3400IUに相当します。

ただし、栽培方法によってビタミンDの含有量は大きく異なります。

きのこは紫外線にさらされることでビタミンDの生成が促進されるため、自然光に晒されたきのこは特にビタミンDを多く含みます。

②日光を浴びてビタミンDを生成する方法

ビタミンD3はヒトが自ら作り出すことが可能なビタミンです。

主にヒトの皮膚に存在する、7-デヒドロコレステロール(プロビタミンD3)から作られます。

以下は、日光の紫外線を浴びて活性型ビタミンD3が生成されるまでのプロセスを簡単に説明します。

紫外線によるビタミンDの生成

人の皮膚に特定の紫外線、UV-B(280~315nmの波長)が当たると、皮膚にある7-デヒドロコレステロールがプレビタミンD3に変わります。

この変化は太陽の光が直接皮膚に当たったときに起こります。プレビタミンD3は、体温の影響を受けてビタミンD3に変化します。

この過程は自然に体内で行われ、特別な外部からの助けは必要ありません。

生成されたビタミンD3は、ビタミンD結合タンパク質という特定のタンパク質によって肝臓に運ばれます。

肝臓でさらなる変換を経て、体全体で利用できる活性型ビタミンDをになります。

日光を浴びることの重要性

UV-Bは服やガラスを通過できないため、屋内で多くの時間を過ごしたり、外出時に日焼け止めを使うとビタミンDが不足しやすくなります

紫外線が肌に悪影響を与えることはありますが、適度に日光を浴びてビタミンDを得るバランスが大切です。

日光とビタミンDの具体的な数値

例えば、夏の東京で30分直射日光を浴びた場合、肌の露出度が10%の状態で約700~800IUのビタミンDが体内で生成されます。

季節と緯度によるビタミンDの変動

紫外線の量は季節や地域(緯度)によって異なります。

北半球の高緯度地域では、冬季にオゾン層で紫外線が吸収されるため、夏に比べて得られるビタミンDが大幅に減少します。

冬に同じ時間日光を浴びても、夏のように多くのビタミンDは生成されません

日光浴の適切な時間や季節を意識することが、効果的にビタミンDを得るために重要です。

ビタミンDの活性化

食品から摂取したビタミンD(25-(OH)VD3)や、皮膚で生成されたビタミンD(25-(OH)VD3)は、肝臓や腎臓で活性型ビタミンD(1α,25-(OH)2VD3)に変換されます。

この活性型ビタミンDが体内で効果を発揮します。

ビタミンDの働き

①ビタミンDと骨の健康

ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、体内のカルシウムの動きを調整することで、骨を丈夫にします

具体的には、腸からのカルシウム吸収を促進し、骨でのカルシウムの利用を助け、血液中のカルシウムレベルを適切に保ちます。

ビタミンDが不足すると、体内のカルシウムバランスが崩れ、骨の健康が損なわれることがあります。

これにより、子供ではくる病が、大人では骨粗しょう症が発生しやすくなります。

骨の基本的な機能

  • 体の支持: 骨は体を支え、立つ、歩くなどの日常活動を可能にします。
  • 運動の助け: 筋肉と連携して体を動かします。
  • 保護: 内臓や脳などの重要な器官を保護します。
  • カルシウム貯蔵: 骨はカルシウムを貯蔵し、必要に応じて血液に放出することで、体内のカルシウムレベルを一定に保ちます。
  • 血液の生成: 骨髄は血液細胞を生成する場所です。

健康な骨の維持

健康な骨を維持するためには、ビタミンDだけでなく、カルシウム、マグネシウム、ビタミンK、タンパク質も重要です。

また、適度な運動も骨の健康を促進する効果があります

②ビタミンDと高齢者の健康

健康で活動的な高齢生活の願い

日本の高齢社会において、誰もが健康で自立した生活を望んでいます。

特に、自分の足で歩き、好きなところに自由に出かけられることは、多くの高齢者にとって大切な願いです。

ビタミンDと高齢者の健康

ビタミンDは高齢者の健康維持に非常に重要です。血中のビタミンD(25-(OH)VD3)濃度は、高齢者の筋力の低下や転倒リスクと密接に関連しています

筋力が低下すると、転倒や骨折のリスクが高まり、自立した生活が困難になる可能性があります。

サルコペニアとビタミンD

サルコペニアは、高齢者に見られる筋肉量の減少と筋力の低下を特徴とする状態です。

国立長寿医療研究センターによる研究では、ビタミンDのレベルとサルコペニアの発症が関連していることが示されています。

適切なビタミンDの摂取は、筋力を維持し、高齢者の生活の質を向上させるのに役立ちます。

これらの情報から、高齢者におけるビタミンDの適切な管理が、健康で自立した生活を送るための鍵であることがわかります。

日々の食事や、必要に応じたサプリメント摂取、適度な日光浴が推奨されます

③ビタミンDと脳の健康

ビタミンD3の脳内での役割

ビタミンD3は、単に骨の健康だけでなく、脳の健康にも重要な役割を果たし、神経細胞の保護やその増殖、分化の調節をつかさどります。

これにより、神経細胞が適切に機能し、脳の健康が維持されることが可能となります

ビタミンD3と精神健康への影響

活性型ビタミンD3のこのような作用は、行動や精神の健康問題に対する有望な対策として注目されています。

ビタミンD3が十分にあることで、ストレスに関連した問題やうつ病などの精神的トラブルに対しても、より良い対応が期待できるとされています。

④ビタミンDと免疫機能の調節

ビタミンDの免疫強化効果

ビタミンDが免疫系の強化に役立つ可能性があるとされています。

免疫システムは体を病原体から守る重要な役割を果たし、ビタミンDはその機能をサポートすることで、感染症に対する体の抵抗力を高めるとされています。

ビタミンD3とインフルエンザの予防

特に冬場に多く見られる季節性インフルエンザに対して、ビタミンDの効果が注目されています。

冬になると日照時間が短くなり、ビタミンDを自然に生成する機会が減少します。

冬に新聞でよく話題になるインフルエンザですが、ビタミンD3を1日1200 IU摂取することで、インフルエンザAの罹患率が低下するとの研究報告があります。

これはビタミンDが免疫応答を調節し、ウイルスに対する抵抗力を高めるためと考えられています。

⑤ビタミンDと糖尿病

糖尿病:世界および日本の現状

糖尿病は、全世界的に重要な健康問題となっています。

特に日本では、糖尿病が強く疑われる人の数が男性で19.7%、女性で10.8%に上り、推計で約2200万人が糖尿病またはその予備軍であるとされています。

(厚生労働省の国民健康・栄養調査(2019年)による)

ビタミンDと糖尿病リスクの関係

研究によると、血中ビタミンD濃度が高い人は、低い人に比べてタイプ2糖尿病のリスクが64%低いと報告されています。

フィンランドでの乳幼児10,000人を対象にした研究では、ビタミンD(2000IU/日)を摂取することで、タイプ1糖尿病の発症リスクが88%抑制されることが示されました。

ビタミンDの役割と糖尿病予防

これらの研究結果から、ビタミンDがインスリンの機能を支援し、糖尿病のリスクを減少させる可能性があることが示唆されています

ビタミンDは、β細胞の機能を保護し、インスリンの感受性を改善することにより、血糖調節に寄与すると考えられています。

⑥ビタミンDとがん予防の関連性

ビタミンDの役割とがんリスク

ビタミンDとがんとの関連についての研究が進んでおり、多くの報告が示されています。

特に注目されているのは、血中のビタミンD濃度が高い人はがんで亡くなるリスクが低いことを示す研究結果です。

ビタミンDは細胞の増殖を調節し、がん細胞の成長を抑制する効果があるとされています。

がん予防としてのビタミンD摂取の重要性

ビタミンDのがん予防効果についての具体的なメカニズムには「がん細胞のアポトーシス(自然死)を促進する」

「新しい血管の形成を阻害することによる栄養素の供給の減少」などがあります。

これにより、がん細胞の成長が抑制されると考えられています。

総合的ながん予防策として

がん予防の一環として、日光浴を通じた自然なビタミンDの生成や、ビタミンDの摂取が推奨されます

ただし、ビタミンDの摂取量には個人差があり、必要な量を超えると健康リスクが高まる場合があります。

医師や栄養士と相談しながら、適切な摂取計画を立てることが重要です。

⑦ビタミンDと妊娠の関係

ビタミンDの役割と妊娠

ビタミンDは、妊娠しやすい体作りにおいて非常に重要な役割を果たしています。

最近の研究により、ビタミンDが子宮内膜の環境を整え、着床に必要であることが明らかにされています。

これは、ビタミンD濃度が子宮内膜の健康状態と直接的に関連していることを示しています。

ビタミンDと女性の生殖健康

40代の女性において、ビタミンD濃度が低いほど卵子の減少が早いことが報告されており、ビタミンD不足が生殖能力に影響を与えることがあります

また、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性は、ビタミンD不足が多いとされ、ビタミンDの補充が排卵率の改善に寄与することが示されています。

体外受精とビタミンD

体外受精においても、ビタミンDの影響は顕著です。

ビタミンD欠乏は体外受精の着床率や妊娠率の低下に関連しており、適切なビタミンD濃度を維持することが成功率を高めることにつながります

また、ビタミンD不足は初期流産や習慣性流産のリスクを高めることが研究で示されています。

ビタミンDと男性の生殖健康

ビタミンD不足は男性においても生殖健康に影響を与え、精子の運動率や正常な形態率の低下が報告されています。

妊娠中のビタミンD摂取の重要性

妊娠中のビタミンD摂取は、子どもの健康にも影響を及ぼします。

適切なビタミンDの摂取は、子どもが小児喘息にかかるリスクを大幅に低下させることが示されています。

これらの情報から、ビタミンDは妊娠しやすい体作りだけでなく、妊娠維持や子どもの健康にも大きな影響を与えることがわかります。

日光浴、食事、サプリメントを通じて適切なビタミンDレベルを保つことが、妊娠を希望する方にとって非常に重要です。

⑧ビタミンDと皮膚の関係

皮膚疾患:乾癬の治療

ビタミンDはビタミンAと共に乾癬の治療に利用されています。

これらのビタミンは皮膚細胞の成長と分化を正常化することで、乾癬の症状を軽減する効果があります。

ビタミンD不足の現状と原因

世界中で見られるビタミンD不足は、多くの健康問題に関連しています。

ビタミンD欠乏症は現在、世界の約半数の人々に見られ、その割合は上昇傾向にあります。

ビタミンD不足の主な理由には、以下のようなものがあります。

  • 野外での活動の減少: 現代人の生活スタイルの変化により、屋外で過ごす時間が減少しています。
  • 大気汚染: 一部の地域では大気汚染が日光のUVB線の到達を妨げ、ビタミンDの自然な生成を阻害しています。
  • 高緯度地域での生活: 高緯度地域では、日照時間が短かったり、日光が弱いため、十分なビタミンDが生成されにくいです。

血液検査での確認

ビタミンD不足が気になる場合は、血液検査を通じてビタミンDのレベルを確認することが推奨されます。

適切なビタミンDレベルの維持は、これらの健康問題の予防及び管理に有効です。

ビタミンDと日本人

日本人のビタミンD摂取推奨量と耐容上限量

2020年版の日本の食事摂取基準では、18歳以上の男女に対して1日のビタミンD摂取目安量を8.5μg(マイクログラム、約340IU)と設定しています。

一方で、成人の耐容上限量は100μg(4000IU)とされており、これは健康な成人が日常的に摂取しても安全とされる最大量です。

米国との比較と耐容上限量の改定

米国ではビタミンDの耐容上限量が以前よりも高く設定されており、日本でも2020年版の改訂により、2015年版の5.5μgから8.5μgに増量されました。

この改定は、新たな科学的証拠に基づいて行われ、ビタミンDが持つ様々な健康への利益をより適切に反映させることを目的としています。

日本のビタミンD平均摂取量

令和元年の国民栄養調査によると、日本人成人の平均ビタミンD摂取量は6.9μg(約276IU)です。

これは推奨量の8.5μgに満たないため、多くの日本人のビタミンDの摂取量が推奨量未満である状況が明らかになっています。

非常に低い日本人のビタミンDの充足率

⼥性は全世代で⾮充⾜者が8割を超え、特に40代では9割を超えています

全世代で相当数が「不⾜」を通り越した「⽋乏」状態にあることが推測されます。

男性もすべての世代で⾮充⾜状態です。

特に40代以下での⾮充⾜状態が8割を超え、⼥性同様、相当数が「不⾜」を通り越した「⽋乏」状態にあることが推測されます。

食事からのビタミンDの摂取量も年々減少

関連記事:ビタミンB群

ビタミンDを多く含む食品

ビタミンDは魚介類やきのこ類に多く含まれています。

ここでは、ビタミンDを多く含む調理済み食品(やむを得ず一部「生」表記)と、その100g当たり含有量を紹介します。

(食品成分表2022年度版・女子栄養大学出版部より)

– **あんこうの肝(生)**:100gで110.0μg(4400IU)

– **きくらげ(乾燥)**:100gで85.0μg(3400IU)

– **いくら(生)**:100gで44.0mg(1760IU)

– **かわはぎ(生)**:100gで43.0mg(1720IU)

– **べにざけ(焼き)**:100gで38.0mg(1520IU)

– **かたくちイワシの田作り**:100gで30.0mg(1200IU)

– **うなぎ蒲焼き**:100gで19.0mg(760IU)

医師、医学博士、栄養療法ドクター

富所 潤 Jun Tomidokoro

2002年 金沢医科大学卒業 同年、医師免許取得
2008年 博士号取得 同年、金沢医科大学助教
その後整形外科専門医、整形外科リウマチ専門医取得
2009年 公立宇出津総合病院整形外科医長、
     リハビリテーション科医長
2013年 神奈川県内の病院に勤務
2017年 回復期リハビリテーション専従医取得
2021年 株式会社メフィス設立
2022年3月 病院勤務を辞め独立