-FAQ-
鶏レバーは少量(20g弱)でビタミンAの許容上限摂取量に達すると聞きました。
鶏レバー20gの鉄分はそれほど多くないようですが、摂取するときの注意点や基準があれば教えてください。
皆様、一般的なネット情報でビタミンAの過剰については知識があり、特に妊婦さんは赤ちゃんの催奇性が取り沙汰されるので、ビタミンAの摂取に関しては、とてもナーバスになりやすいです。
ビタミンAは脂溶性ビタミンで身体に蓄積されて過剰症のリスクがあるとの認識は、周知のことだと思うのです。
ただし、一口にビタミンAと言いましても、その中でも種類があるのです。
野菜に含まれているのはβカロテン(プロビタミンA)です。
βカロテンは摂取後に体内で必要に応じてレチノールに変換されます。
ただし、この変換は非常に効率的に調節されており、ビタミンAの過剰摂取を防ぐ仕組みがあります。
変換効率はビタミンAの必要性に応じて調節されるため、過剰摂取による毒性リスクがありません。
安全性が高いことから、ビタミンA摂取源としては一般的にはβ-カロテンが推奨されることが多いです。
でも効果的なのは動物性タンパク質に含まれているレチノールの形です。
食品から摂取すると、肝臓で蓄えられて、必要に応じて放出されます。
サプリメントもこの形が多いです。
次にレチノールが変換されてレチナールになります。
これは視覚機能に関与します。ビタミンAが目に良いと言うのはこれですね。
さらにレチナールが酸化されるとレチノイン酸が生成されます。
これは強い活性を持ち、細胞内でシグナル伝達や遺伝子発現の調節にも関与しています。
レチノイン酸まで行くと、元のレチナールやレチノールには戻ることができません。これは不可逆的な変換の反応になります。
レチノールやレチノールは可逆的反応となりますので、これはお身体の中で厳密に制御されています。
催奇性が問題となるのは、このレチノイン酸です。
通常、食品にはこの形では含まれていません。
◎身体の調節機能
正常な状態では、以下のような代謝の調節機構により、レチノイン酸の過剰生成を防いでいます。- ・レチノールの代謝速度の調節
レチノールからレチナール、さらにレチノイン酸への変換は酵素(レチノール脱水素酵素やアルデヒド脱水素酵素)の活性に依存しています。
これらの酵素の活性は、レチノール濃度や体内のビタミンA需要に応じて調節されます。 - ・酵素の飽和
レチノール脱水素酵素やアルデヒド脱水素酵素は過剰なビタミンAが存在しても無制限に活性化されるわけではありません。 - ・レチノイン酸の代謝排出
レチノイン酸はCYP26(シトクロムP450ファミリーの酵素、この酵素には実は鉄も関与しています)によって代謝され、水溶性の代謝物として体外に排出されます。
ちょっと難しい話になりましたが、レチノールの代謝とレチノイン酸生成は、通常の摂取量では身体の調節機能により適切に管理されています。
しかし、サプリメントなどで高容量で過剰摂取することによってこの調節機能が破綻すると、レチノイン酸の過剰生成が催奇性や毒性の原因になるということです。
食品には、このレチノイン酸の形では存在しません。皮膚科の治療や癌治療にはレチノイン酸が使われることがあると思います。
おそらく、お口から入る通常の食品では、身体の調節機構によって過剰症の心配はぼぼないということを私は栄養療法の講義で習ってきています。