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用語集

亜鉛

亜鉛(Zinc)とは

亜鉛は、原子番号30の金属元素元素で記号はZn。人が健康を維持するために必要なミネラルで、体内に2〜3g存在します。

亜鉛は筋肉、骨、歯、肝臓、腎臓、皮膚、毛髪、消化管、膵臓など、全身の細胞内に存在していますが、ヒトが自ら体内で亜鉛を生成することができません。

したがって亜鉛の補充にあたっては食事から摂取する必要があります。

亜鉛の働き

亜鉛は、全身の細胞に存在し、細胞の正常な分裂や、全身の新陳代謝を促し、発育や成長、傷の修復など、身体の維持にとても重要な役割を果たします。

身体に侵入してきた細菌やウイルスを防御する免疫システムにも寄与しています。タンパク質やDNAなど、すべての細胞の中にある遺伝物質を合成するためにも必要です。

また、妊娠中、乳児期および小児期の身体は、十分に成長・発達するために亜鉛を必要とします。亜鉛は適正な味覚や臭覚にも重要です。

亜鉛の働きを理解する際に必ず知っておきたいことは、酵素と補酵素の関係です。

酵素というのは、身体内で起こる様々な化学反応を助けるために必要ですが、補酵素の存在によって酵素はその役割を果たすことができます。

亜鉛は、300以上の酵素の補酵素となります。

これにより活性酸素の除去や健康な肌の維持、精⼦形成、 アルコールの分解、味覚維持、⼦供の成⻑に必須の代謝を促進させます。

この役割を果たすには、酵素に含まれる十分な量の亜鉛が必要です。

亜鉛の働きを以下に羅列します。

  • 細胞分裂を正常に行う
  • 発育や新陳代謝を助ける
  • 皮膚や髪の毛、粘膜の健康を保つ
  • 生殖機能を維持する
  • 味覚を維持する
  • 免疫機能を正常に働かせる
  • 300以上の酵素の反応を活性化する
  • ホルモンの合成や分泌の調整
  • DNA合成
  • タンパク質合成

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亜鉛の吸収と分布

亜鉛の吸収メカニズムと体内での分布は以下のとおりです。

亜鉛には鉄におけるフェリチンのような貯蔵タンパクがありません。

また、⽋乏に備える臓器もありません。(鉄における肝臓、カルシウムにおける⾻)

したがって亜鉛は食事から常に補い続ける必要があります。亜鉛を補い続ける限り、亜鉛はそれを必要とする全身の臓器にしっかり届けられます。

健康な生活を送るためには貯蔵の効かない亜鉛を、常に十分に摂取することが重要です。

亜鉛が不足する理由

亜鉛が不足する主な理由は以下のとおりです。

1.亜鉛の摂取不足

糖質・炭水化物中心の食生活や、そもそも亜鉛を含まない加工食品中心の食生活では十分な亜鉛を摂取することができません。

また、亜鉛を豊富に含む肉類を避ける菜食主義者の方にも亜鉛欠乏が多くいらっしゃいます。

菜食主義者の方が好まれる穀物や豆類には亜鉛の吸収を妨げる物質(フィチン酸など)が含まれることも理由として挙げられます。

2.アルコールによる消費

アルコールの分解に亜鉛が大量に消費されます。また、アルコールを好む方の食品の量や種類は、多くの場合亜鉛含有量の少ないものが多いです。

3.消化器疾患や特定の薬物の服用

消化管手術を受けた人、または潰瘍性大腸炎、クローン病などの消化器疾患を有する人。

これらの状態にある場合、体が吸収する亜鉛の量が減少し、尿中に失われる量が増加します。

特定の薬剤の長期服用(関節リウマチ、パーキンソン病、うつ病、糖尿病、甲状腺機能亢進症、痛風、てんかんなど)も不足の要因となる場合があります。

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亜鉛が不足すると

亜鉛が不足すると、次のような症状が現れる可能性があります。

  • 成長・発育障害
  • 味覚障害
  • 皮膚の炎症
  • 口内炎
  • 抜け毛
  • 生殖機能の低下
  • 食欲不振
  • 貧血

近年発表された医学論文では日本人の10~30%が亜鉛欠乏のリスクがあるとされており、特に高齢者と乳幼児においてそのリスクが高くなっています。

(Kumssa, D.B., Joy, E.J., Ander, E.L., Watts, M.J., Young, S.D., Walker, S., & Broadley, M.R. (2015) Sci. Rep., 5, 10974.)

亜鉛と乳幼児

日本での乳児の摂取推奨量は1日あたり2〜3mgとされています。(厚生労働省)

体重あたりに換算すると乳幼児の摂取推奨量は成人(成人女性で8 mg/日、成人男性で10 mg/日)の約3倍に達しますが、これは乳幼児の著しい成長に必要とされる亜鉛の量に見合った値です。

同等の亜鉛を母乳中に分泌するために授乳婦に対しても,+3 mg/日の付加が推奨量として定められています。

お母さんが摂取した亜鉛を、母乳を通してしっかりと乳幼児に届けてあげることが何より大切です。

このように多量の亜鉛を必要とする乳幼児は、ちょっとした摂取不足により容易に亜鉛欠乏に陥り、肌荒れなどの症状が出ますのでくれぐれもご注意ください。

亜鉛を多く含む食品

亜鉛は様々な食品に含まれており、健康な食生活を送るためにはこれらの食品を適切に摂取することが重要です。

ここでは、亜鉛を多く含む調理済み食品(やむを得ず一部「生」表記)と、その100g当たり含有量を紹介します。

(食品成分表2022年度版・女子栄養大学出版部より)

亜鉛

  • 牡蠣
  • 豚レバー
  • 豚肉
  • うなぎ

に多く含まれていますが、量的には上位は牡蠣の独占になります。

– **牡蠣(くん製油漬缶詰)**:100gで25.0mg

– **牡蠣(養殖水煮)**:100gで18.0mg

– **牡蠣(養殖生)**:100gで14.0mg

– **豚スモークレバー**:100gで8.70mg

– **豚レバー(生)**:100gで6.90mg

(レバーの生食は禁じられていますが「焼き」の情報がないので参考までに掲載します)

– **豚ヒレ赤肉(焼)**:100gで3.60mg

– **うなぎ(蒲焼)**:100gで2.70mg

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もしかして亜鉛不足?

亜鉛の不足は、さまざまな身体的な問題を引き起こすことがあります。

以下は亜鉛が不足している可能性をチェックするためのリストです。これらの症状がある場合は、亜鉛の摂取のご検討をお勧めします。

亜鉛不足のチェックリスト

1. **身長が伸びない**:成長期なのに成長しない。

2. **味覚がおかしい**:食べ物の香りや味わいがわからない。

3. **肌荒れ**:皮膚が乾燥しやすくなった。

4. **口内炎・口角炎ができやすい**:頻繁に口の中や唇の端に炎症が生じる。

5. **抜け毛**:髪の毛が抜けやすくなった。

6. **性欲の衰えを感じる**:(特に男性)

7. **貧血と指摘された**:(特に女性)

8. **怪我が治りにくい**:傷がいつまで経っても治らない。

9. **爪がおかしい**:爪が弱くなり割れやすくなった。

これらに該当する場合、亜鉛の不足が原因かもしれません。

食事の見直しや、必要に応じてサプリメントの利用を検討し、医師や栄養士と相談することをお勧めします。

亜鉛は貯蔵が効かないにも関わらず、身体の機能を正常に保つ役割を果たしているため、日頃から十分な摂取が必要です。

医師、医学博士、栄養療法ドクター

富所 潤 Jun Tomidokoro

2002年 金沢医科大学卒業 同年、医師免許取得
2008年 博士号取得 同年、金沢医科大学助教
その後整形外科専門医、整形外科リウマチ専門医取得
2009年 公立宇出津総合病院整形外科医長、
     リハビリテーション科医長
2013年 神奈川県内の病院に勤務
2017年 回復期リハビリテーション専従医取得
2021年 株式会社メフィス設立
2022年3月 病院勤務を辞め独立