-FAQ-
貧血気味だと健康診断で出て、サプリを摂ろうかと考えていましたが、「鉄は酸化するから摂らないほうが良い」「鉄はリサイクルされるから食品で十分」「鉄を摂ると糖尿病リスクが上がる」といった情報も見かけます。
鉄とはどう向き合うのが正解でしょうか。
鉄は「酸化する」「糖尿病を招く」といった情報が一部で拡散されていますが、これは一面的な理解であり、鉄の生理的役割・代謝の仕組み・リスクが異なる条件を正しく区別して考えることが大切です。
1.鉄はなぜ必要なのか
鉄はヘモグロビン・ミオグロビン・酵素群(チトクロム・カタラーゼなど)の構成要素であり、酸素運搬・エネルギー産生・神経伝達物質合成・免疫機能など、全身の生命維持に欠かせません。
2.鉄のリサイクルと失われる鉄
鉄は確かに体内でリサイクルされますが、「完全に再利用できる」わけではありません。
赤血球の寿命(約120日)が尽きるとマクロファージで分解・再利用されますが、
- 出血(月経・手術・寄生虫感染など)
- 汗・尿・皮膚の剥離
によって1日あたり1〜2mgの鉄が失われ、この分を食事で補う必要があります。
特に月経のある女性では月あたり15〜30mg程度の鉄損失が起こるため、食品だけで十分量を保つのは困難です。
3.サプリ・薬の「酸化」について
「鉄は酸化する=体を錆びさせる」という誤解があります。
確かに、鉄は酸化還元反応に関与しますが、体内では
- トランスフェリン(運搬)
- フェリチン(貯蔵)
というタンパク質によって安全に包み込まれています。
この制御下にある限り、鉄が酸化ストレスを起こすことはありません。
問題になるのは以下のようなケースです:
- 血中フェリチンが極端に高い(300〜400ng/mL超)
- ヘモクロマトーシスなど遺伝的な鉄過剰症
- 長期にわたり医師管理なく高用量の鉄サプリを摂取した場合
このような状態では、鉄が遊離し「フリーラジカル」を発生しやすくなります。
日本で認可されていないアミノ酸キレート鉄などを自己判断で服用するのは上記のような理由から、とても危険です。
鉄と糖尿病リスクの関係
鉄過剰が酸化ストレスやインスリン抵抗性に関係するとした研究はありますが、それは「鉄過剰状態」(特に男性・閉経後女性)での話です。
一方、貧血傾向にある人が鉄を補うことは糖尿病リスクを上げるどころか、代謝・甲状腺・ミトコンドリア機能を改善する方向に働きます。
鉄は「酸化物」ではなく「生命の燃料」です。
足りなければ疲労・うつ・冷え・甲状腺低下・免疫低下を招きます。
過剰に摂れば酸化ストレスを起こしますが、不足している人がサプリメントで摂ることはリスクではなく治療的な効果をもたらします。
特に有経女性においては鉄は毎月失われてしまうミネラルです。
お食事だけでQOLを高く保つための代謝を支えることは極めて困難なことです。
品質の良いヘム鉄の摂取を推奨いたします。
